北野の小学校を利用した美術研究所で本格的な絵画の勉強
水木先生は今津に住んでいた頃、神戸市中央区の北野小学校で開かれていた神戸市立美術研究所という夜間教室に通い、週3回デッサンの勉強をしました。教室では小磯良平、小松益喜、田村孝之介といった講師陣が指導しており、今ではちょっと考えられないほど豪華な絵画教室だったようです。
小磯良平といえば言わずと知れた神戸を代表する洋画家の1人ですネ。戦後に東京藝術大学教授として後進の指導にあたっていたそうですから、神戸で一般市民に絵を教えていたのはその少し前だと思われます。
小松益喜は「異人館の画家」として知られており、異人館や居留地の絵をたくさん残しています。小磯良平と小松益喜の絵はそれぞれ六甲アイランドにある神戸市立小磯記念美術館と神戸ゆかりの美術館に収蔵されています。
旧北野小学校は1908年(明治41年)に開校された歴史のある学校でしたが、児童数の減少と阪神淡路大震災の被害により1996年に市立こうべ小学校と合併し閉校となりました。校舎は閉校の2年後に神戸市の地場産業紅振興を目的とした神戸の体験型観光スポット「北野工房のまち」として生まれ変わり、ほぼそのまま活用されています。
各教室はカフェや雑貨店にリノベーションされ、「神戸ブランドに出逢える体験型工房」をコンセプトに牛革のコインケースづくりや和ろうそくの絵付けなど様々な体験教室が開かれています。
テレビが家庭に普及するにつれ紙芝居の時代は終焉を迎えます。昭和32年、水木先生は再起を賭けて再び上京し、36歳で漫画家へと転身することになります。
わたしたちを結びつけ、元気づけてくれる妖怪
写真:水木湯の入り口に置かれた招き猫。これも日本のオリジナルキャラクターですね。
ザ・ニューヨーカーは、世界的スーパースターであるキティちゃんやピカチュウをはじめ、ありとあらゆるものをキャラクター化してしまう日本人の不思議な国民性について触れており、「日本中が混乱と不安に陥っているとき、キャラクターを使って人々を元気づけるのもうなずける」と述べています。
水木先生の子供時代をベースとした自伝的漫画『のんのんばあとオレ』のなかで、父は主人公の茂に向かってこう言います。「茂。人を感動させるものは、ありのままの形だけではない。こんなことがあってもええんじゃないかなーと思う夢なんだよ」
前代未聞の出来事に遭遇し恐ろしさや不安な気持ちに襲われたとき、何もできないと感じた私達にできる唯一のこと、それは想像力を発揮することかも知れません。
江戸時代に描かれた稚拙ともいえる一枚の絵から飛び出した妖怪が今、外出して人と直接会うことを制限され、家の中に引きこもって暮らすしかない状況に置かれた私達を、インターネットという現代の技術を通じて結びつけ、元気づけてくれています。
【情報】
下記情報は通常時のものです。状況が落ち着いたらぜひ訪問してみてくださいね。
水木湯
アドレス:神戸市兵庫区水木通2-2-21
アクセス:新開地駅から徒歩3分
営業時間:7:00~10:00 14:00~23:00
定休日:日曜日
料金:大人 450円 小人 160円
電話:078-576-4448
北野工房のまち
アドレス:神戸市中央区中山手通3丁目17−1
アクセス:各線三宮・元町駅より徒歩12分またはシティー・ループ⑧北野工房のまち下車すぐ
営業時間:10:00~18:00(現在臨時休館中のため営業再開についてはHP参照)
休館日:不定休・年末年始
入館料:無料
珈琲館初音屋
アドレス:西宮市津門川町12-13
アクセス:阪神今津駅から南へ徒歩1分
営業時間:8:00~19:00(木曜日8:00~17:00)
電話:0798-35-9961
Facebookページ:https://www.facebook.com/hatsune19770508
アマビエぬり絵
現在小学館の全学年向け雑誌『小学8年生』のコーナーから水木先生のアマビエのぬり絵が無料で公開されています。5月6日までダウンロード印刷が可能ですので、ぜひおうちで楽しんでみてください。
小学8年生HP:https://sho.jp/sho8
【参考】
「完全版マンガ水木しげる伝」 水木しげる著 講談社漫画文庫
「ほんまにオレはアホやろか」 水木しげる著 新潮文庫
「のんのんばあとオレ」 水木しげる著 講談社漫画文庫
「図説 日本妖怪大全」 水木しげる著 講談社+α文庫
FROM JAPAN, A MASCOT FOR THE PANDEMIC THE NEW YORKER 2020/4/9
文/チアフルライター やまさん
※取材は緊急事態宣言が発令される前に行ったものです
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