大阪開港の碑
【前編】「九条ぶらり旅」ツアー 水都大阪の土木遺産や歴史遺産を堪能@西九条
1858年の安政五カ国条約及び日米修好通商条約によって江戸幕府は1868年に函館・新潟・横浜・長崎・神戸そして江戸・大阪の港を海外に向けて開きました。神戸の旧居留地と同じくこの地にも欧米からやってきた外国人が多く住み、「川口居留地」を形成しました。
神戸港と違って当時の大阪港であった富島は安治川河口から6キロ上流にあり、水深が浅く大型船の入港が困難だったため、1872年には外国船の入港が途絶え、貿易港としての役目を神戸港へと譲ることとなりました。ですが、碑の建つ安治川の対岸には大阪の台所である巨大な大阪市中央卸売市場が鎮座しており、今もなお大阪にとっての物流の拠点となっています。
写真:これは安治川で荷役に使用されていたクレーンだそうです。昔の荷役は大変な重労働でした。現在の港湾荷役はガントリークレーンと呼ばれる赤と白のシマシマのキリンのような形をしたクレーンを使い、コンテナ単位で荷物の上げ下ろしが行われます。
写真:これはボラードと呼ばれる繋船柱です。路面より2メートル近く高い場所にあるので、この地域の海抜がかなりひくいことがわかります。
川口居留地跡
写真:川口居留地時代の地図。手前が安治川、奥が木津川
大阪港開港と同時に安治川と木津川が分岐する川口に外国人のための居留地が整備されました。この川口居留地から大阪発の電信局、洋食店、カフェなどが生まれ、文明開化の発信基地となりました。貿易商たちが神戸に去った後には、入れ替わるようにキリスト教各派の宣教師が教会堂・病院・孤児院・学校を建て、布教活動や設備の経営を行いました。
この居留地から平安女学院、プール学院、大阪女学院、桃山学院、立教学院、大阪信愛女学院といった有名ミッション系スクールが数多く誕生しました。残念ながらそれらの学校は他の土地へ引っ越してしまい、後に華僑が多く住むようになりましたが、居留地時代の建築物はほぼ全て空襲で全て焼失したそうです。
写真:富島天主堂があった場所。現在は幼稚園になっています。
日本聖公会川口基督教会
写真:クリスチャンでなくとも厳かな気持ちになってくる立派な礼拝堂
旧川口居留地の中に唯一残る居留地時代の教会です。1870年に米国聖公会宣教師C.M.ウィリアムズ主教によりこの地に英学講義所が開校、英語による礼拝が初められたのが教会の始まりとされています。現在の礼拝堂が建てられたのは1920年。阪神淡路大震災により塔が倒れ、甚大な被害を被ったものの、寄付により1998年に復元されました。
小説『泥の河』文学碑
宮本輝氏のデビュー小説『泥の河』物語の舞台に使われたのは船津橋、端建蔵(はたてくら)橋、湊橋、昭和橋あたりだそうです。直ぐ側を市電が走っていたといいます。舞台は昭和31年、戦後10年が経ったとはいえ、まだまだ戦争の後遺症を引きずった人、戦争で夫をなくした寡婦が数多くいた時代のお話です。
当時、安治川沿いに限らず港湾の荷役人一家などが艀(はしけ)を住まいとする水上生活者が多く存在したそうです。余談ですが、神戸港の一角にもそんな人々が暮らした場所があり、艀から落ちて亡くなった子どもたちを弔うメリケン地蔵尊が祀られています。
『泥の河』について全く知らなかったやまさん、ツアーの後で映画を見てみました。小説の舞台は土佐堀川だそうですが、実際の撮影には名古屋市の中川運河が使用されたそうです。当時の面影はなく、碑の頭上には3本の巨大な阪神高速3号神戸線橋が架かっていました。
12:30 うおまん中之島店で昼食
写真:堂島川、土佐堀川、安治川、木津川が合流・分岐しているのが見えます。左上の出っ張ったところが居留地跡です。ここからの眺望を目にしたとき、やまさんは初めて大阪が別名「水都」と呼ばれる理由を理解しました。網の目のように入り組んだ川を商いに上手く利用することで大阪という街がここまで発展してきたんですね。
最後に土佐堀川と堂島川に挟まれた中之島へ。中之島センタービルの31階にあるうおまん中之島店で昼食をいただきました。ツアー参加者は神戸、芦屋、西宮、大阪など阪神間にお住まいで、阪神電鉄が発行する情報誌「ホッと!HANSHIN」の記事を見たという人が多かったです。前回の旧甲子園ホテル周辺ツアーから続けて来た方や、「安治川隧道に興味があった」という方も。
どのツアー参加者も町歩きがお好きなようで、さしずめ歩く町トリビアといった人ばかり。町歩きツアーの醍醐味はガイドさんのお話と一緒にこうした町歩きの達人のお話も同時に聞ける点にあります。やまさんもツアーに参加された方達から新たな面白スポットやツアー情報を仕入れることができましたよ。こうなってくるとますます町歩きがやめられなくなるのです。
九条ぶらり旅 ツアー詳細・参考URL
【ツアー詳細】
【参考URL】
川口居留地研究会 大阪税関付近及び外国人居留地並びに朱印内之図(明治6年頃)
HP Tenyu Sinjo.jp 安治川トンネル(安治川隧道)
文/チアフルライター やまさん
一緒に沿線の魅力を発信してみませんか?
チアフルライターはまだまだメンバーを募集しています。
参加の流れは以下の通りです。
(1)Facebookグループ「HANSHIN女性応援プロジェクトサポーターグループ」にご参加ください。
(2)チアフルライター勉強会(兼説明会)の日程を(1)のグループでご案内します。
(3)勉強会に参加して、チアフルライターの活動内容やコラムの書き方などの研修を受けていただきます。
説明を聞いてこれならできそうだ...と思ったらチアフルライターへの参加をお申し込みください。
阪神沿線が大好きな女性のご参加をお待ちしています!