甲子園のACCEPT COFFEE ROASTER(S)のチームがバリスタの全国大会へ!公開練習会に参加
エンカチライターのなないろです。
子育てや働く日々の側にある、心地よいなぁと感じられる街の魅力を見つけて発信していきたいなと思い、記事を執筆しています。
今回は、以前取材させていただいた甲子園にあるスペシャルティコーヒー専門店『ACCEPT COFFEE ROASTER(S)(アクセプトコーヒーロースターズ)』さんより、9月末に東京で開催される「第5回 CHALLENGE COFFEE BARISTA(チャレンジコーヒーバリスタ)」への出場にあたり、9月19日に西宮市民会館(アミティ・ベイコムホール)中会議室にて行われる公開練習会のご案内をいただき、参加してきました。
ACCEPT COFFEE ROASTER(S)さんの紹介記事はこちらをご覧ください。
「コーヒー×福祉がテーマ 街角のスペシャルティコーヒー「ACCEPT COFFEE ROASTER(S)」@甲子園」
公開練習会の様子や、メンバーの所作一つ一つから垣間見えたコーヒーに向き合う真摯で丁寧な姿勢、改めて感じたACCEPT COFFEE ROASTER(S)というお店の魅力をレポートします。
CHALLENGE COFFEE BARISTAとは?
CHALLENGE COFFEE BARISTAとは、日本サステイナブルコーヒー協会が主催する、障害のある方々がバリスタとして専門技術を磨き、働く喜びと共に社会参加の可能性を広げることを目的とした大会で、今年で5回目の開催を迎えます。
全国から応募されたチームの中から、オンライン予選を勝ち抜いた9チームが東京・品川プリンスホテルに一堂に会し、その技術を競うもの。本大会ではサステイナブルなコーヒー豆を使用して、独自のブレンドを作成し、味わいと技術が審査されます。
バリスタの技術競技であると同時に、コーヒーを通じて多様な人々が互いを理解し、認め合うインクルーシブな社会の実現を目指しています。
地区予選を勝ち抜き、関西から出場を決めたのはACCEPT COFFEE ROASTER(S)のチームと三重県の2チーム。前回2023年にも出場し、3位入賞を果たしたACCEPT COFFEE ROASTER(S)のチームは、今回また新たなブレンド、新たなメンバーで優勝を目指し日々練習を重ねています。
実際の競技は各チーム10分間の準備時間、10分間の競技時間が取られ、2台並べられた机で交互に準備→競技が行われます。審査員席が競技の席の前に配置されていますが、他の観客席はなくスタンディングのため、自由に近くで抽出など競技の様子を見ることができる形式となっているそうです。
9月30日開催の本大会に向け、既に2回の練習会を経て、今回私が参加させていただいた練習会が最後の公開練習会でした。
練習会の様子をレポート スムーズなチームワークと丁寧な所作
はじめに開始の挨拶や、CHALLENGE COFFEE BARISTAについての説明があり、その後競技の披露、審査員からの言葉、試飲タイム、質疑応答タイムといった流れで行われました。
今回の練習会は、当日の大会競技環境を模して、会議室内前方の長机で10分間の準備、10分間の競技を続けて披露されます。
参加者には応援メッセージカードが予め配られ、カードの後ろに星印があった方が審査員役として最前列の席に座り、競技の様子を見守りました。

私自身もコーヒー好きではありながらも、豆から美味しいコーヒーとなって手元に提供されるまでの手順をゆっくりと見るのは初めて。
機材や豆が入った籠が机上に置かれたところから、開始の合図で時間計測が始まります。

お互いにコミュニケーションを取りながら手際よく道具を並べていく、今回出場する3人のメンバーの皆さん。
静かに、穏やかに次々と準備が進みます。

準備時間は10分間設けられていますが、練習会では6分半程度で準備が完了し、メンバーが手を挙げて準備完了を告げました。この準備時間の様子も審査の対象となり、早い方がより良いそうです。

続いて本番競技が開始されます。
本番では競技を行っているチームのブレンドについての説明がバックでアナウンスされる中で行われるということで、この練習会でもブレンドの説明を聞きながら競技を拝見しました。
今回のブレンド名は「スイッチ」

一人のメンバーの『今は亡きお父さんが淹れてくれたコーヒーの記憶』から生まれたブレンドです。「記憶に残り続けるコーヒーを提供したい」という想いから、配合・レシピ・抽出を繰り返し検証し、抽出担当を決める社内選抜を実施されたそうです。
技術を磨く中で切り替わったメンバーのスイッチでサービス力、技術力も向上し、そしてこのコーヒーが日常に優しい幸せのスイッチを入れ、いつか今日この日を思い出せるきっかけになれば、という想いが込められたブレンドとなっています。
カップを口元へ運ぶとアロマが広がり、飲むとビターチョコレートのような深いコク、ほのかに感じる果実味、ふくよかで甘い余韻に包まれるブレンド。緊張をオフに、前進の気持ちをオンに。記憶の“スイッチ”になることを願って、届けられるコーヒーとのこと。

ブレンドの説明を聞いている間に、豆が挽かれ室内いっぱいに香ばしく深いコーヒーの香りが漂い、ホッと癒されます。

お湯が沸く音、豆を挽く音、豆を挽いた後の処理、挽いた豆を抽出器にセットする音。
どれもが静かな室内に優しく響き、緊張感のある中ながら穏やかさを感じるのは、メンバーの皆さんが重ねてきた練習による安心感やチームワークの良さから来るもののように感じます。

また、コーヒーを抽出する過程を詳しく知らない私でも見ていて強く感じたのは、メンバーの皆さんの一つ一つの所作の丁寧さ。

手際の良さと共に、豆がメンバーの手から手へと渡る過程、使う道具一つ一つの使用前後の扱いがどれもスムーズで、かつ大切に行われているのを感じました。

普段お店で淹れてもらって飲むコーヒーって、同じ豆でも家で自分で淹れるのと違って美味しいなと感じることがよくありますが、手元に届くまでにこんなにも丁寧な過程が踏まれているんだと、感動も感じながら競技の様子を拝見していました。

メンバーのテイスティングを経て、コーヒーは審査員の元へ。

カップに注がれたコーヒーが順番にソーサーに乗せられていきます。

淹れたてのコーヒーが、審査員席へと配られます。


4人全員の机までコーヒーが運ばれ、メンバーが挙手して競技終了を宣言して時間計測が終了。

この日の練習会は丁度10分だったそうです。
審査員役の皆さんが試飲している間、他の参加者の手元にも試飲のコーヒーが配られました。

説明にもあった通り、ビターで甘く香ばしい香りを感じつつも、口に含むとビターさの後から果実味や爽やかな酸味を感じる優しい味わいが広がりました。「おいしい!」「いい香り」と参加者の方々の間からも声が上がりました。
審査員役の方々からも一言ずつ感想が述べられました。

一人目はメンバーのご家族様。
「色んな事を思い出して…全国大会に出るまで頑張って、本当にすごいなと思います。とても美味しいコーヒーでした」と、時折言葉に詰まりながらも涙ながらに話される姿に、ACCEPT COFFEE ROASTER(S)のスタッフさん、参加者の私も涙が…
メンバーの方々が全国大会の出場者としてここに至るまで、そしてここに至るまでのメンバーの方をずっと見守り支えて来られたご家族様の想いを垣間見た瞬間でした。
障害と共に生きながら働き、より良いものを求める作業を仕事で突き詰め、それが周りから認められ、評価されるということ。おそらくそれは多様性が叫ばれるようになってきた今の社会の中であっても、乗り越えて来られた壁がたくさんあり、しかしそのような壁を少しでも取り払おう、今よりもさらに一歩シームレスにしようという働きかけやメッセージの発信を行っている、ACCEPT COFFEE ROASTER(S)さんという事業や、このCHALLENGE COFFEE BARISTAというイベントの意義を強く感じた、尊い瞬間でもありました。
西宮のコーヒーの名店のバリスタさんや、社会福祉協議会のスタッフの方など、関係各所から来られた審査員役からも、感想が述べられていきます。
「チーム感を感じました。準備段階でも落ち着いて役割分担されて丁寧にされていたと思います。会場の皆さんの顔を見ながら抽出を始めておられたところが良かったです。深みもありながら甘みもありスッキリした味わい、優しい味わいでした」
「所作が丁寧で、とても緊張されていたと思いますが緊張も感じずスムーズでした」
「コーヒー美味しかったです。これが全国に進む方々のお仕事なんだと感動しました。チョコレートのような、ビターなど、書いてある通りの味がするなと感じました。日本一の味が味わえてよかったです」
と、競技の評価と激励の言葉が続きました。
全国大会を控えたメンバーの意気込み
最後の質疑応答タイムに、メンバーの意気込みや今回の大会にかける想いについて伺いました。
「今回の大会が初めてですが、色んな場数を踏んでチームのみんなで練習してきたので、チーム全体としても個人としても優勝できるように頑張りたいです!」
「頑張っています!」
「2023年の大会にも出ている全国3位だったので、前回の結果を越えられるように頑張りたいと思います!」
とメンバー3人が気合十分に前を向いた言葉を語りました。
また、前回3位だった時から改良された点として 「チームワークを重視して笑顔を生かせるようにしました。ブレンドは前回飲みやすいコーヒーを目指したのですが、今回は苦みのある、コーヒー好きの方にも喜ばれるブレンドを目指しました。」と、チームワークの良さやブレンドにも力を入れたそうです。
社内でも出場者や役割を決めるためのコンペを開催し、抽出担当のメンバーは今回のブレンドの味わいを引き立てるために、苦さが欲しいが苦さを出せる抽出方法は何だろうか?ここを変えるとどんな味になるんだろうか?こうするとこんな味になるのかな?と、抽出方法は自主練習と研究を重ねた結果、お湯のスピードを速くする、お湯の太さを細くするという方法に至ったそうです。磨いてきた技術やこだわりがしっかりと競技に反映されており、まさにプロとしての矜持を感じる言葉でした。

メンバー3人お揃いのTシャツは、ACCEPT COFFEE ROASTER(S)4周年記念に作られたグッズで、野球の聖地甲子園をイメージしたユニフォーム風のデザインになっています。背番号の6は、店舗がある「甲子園六番町」の“6”をあてたもの。

袖にもロゴが入っていてオシャレなこちらは4周年グッズとして店舗の方で販売されています。

エプロンにはACCEPT COFFEE ROASTER(S)お馴染みのロゴが。このロゴは、船出と、西宮の神様であり障害を持ちながらも福をもたらす神として時代を越えて多くの人の信仰を集める「えべっさん」をイメージしたもの。
甲子園から、背番号を背負い、全国へと船出をしていくACCEPT COFFEE ROASTER(S)チーム、優勝とベストパフォーマンスを目指して頑張れ!!
公開練習会に参加してみた感想
今回、初めてコーヒーバリスタの競技を間近で拝見させていただきました。
何より感じたのは、ブレンド作りからコーヒーとして手元に届くまでの工程に、これほどまでに様々な研究や技術向上の努力が為されており、その一つ一つの工程に込められたこだわりや丁寧さが、飲む側にも届くのだなという驚きと感動でした。
コーヒー好きとして、作り手のそういった作業工程や研究過程を見させていただくことができたのは、とても嬉しい体験でした。

以前の記事の中でも障害者雇用に関するACCEPT COFFEE ROASTER(S)さんの取り組みについて取材させていただきましたが、今回の取材を通して「働き甲斐」、「やりがい」という言葉を超越した、全国に届くような技術力とチームワークの強さを感じました。
そして全国規模でのCHALLENGE COFFEE BARISTAという取り組みや、人それぞれの個性や強みを持ったメンバーが、自分の得意を生かし合いながら、素晴らしいものを提供するという一つの目的に向けて妥協せず突き詰める姿を見て、コーヒーが持つ「味わい」や「美味しさ」だけではない、コーヒーに携わる人がさらに広く、かつ豊かになれるという魅力と可能性をさらに強く感じました。
当日の様子はYouTubeでも配信されるそうです。
関西を代表して出場するACCEPT COFFEE ROASTER(S)チームの活躍を楽しみにしています!
そして、ぜひ甲子園にお越しの際は、全国に届くコーヒーを味わってみてくださいね。
CHALLENGE COFFEE BARISTA 詳細情報
第5回 CHALLENGE COFFEE BARISTA
~コーヒーを通じて、すべての人が輝ける社会を目指して~
開催日時:9月30日(火)12:30~17:00(予定)
開催場所:品川プリンスホテル アネックスタワー5F プリンスホール
東京都港区高輪4-10-30
参加チームに関するお問い合わせ:CHALLENGE COFFEE BARISTA実行委員会事務局
E-mail:committee@challenge-coffee-barista.org
大会ウェブサイト:https://www.challenge-coffee-barista.org/
ACCEPT COFFEE ROASTER(S) 店舗情報

阪神甲子園駅 南東に徒歩8分
住所:西宮市甲子園六番町6‐10ウィンビル
電話番号:0798-31-3476
営業時間:10:00~18:00(祝日10:00~17:00)
定休日:日曜定休
駐車場:近隣に1台
運営会社:株式会社のぞみ(就労継続支援B型事業所)
ホームページ:https://www.acceptcoffeeroasters.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/acceptcoffeeroasters/