窓辺に電車が走ってる散髪屋さん!

エンカチライター中島美加です。
阪神甲子園駅から徒歩5分ほどにある、子どもたちに人気の理髪店『スーパーヘアーセオ』は、三代目オーナー瀬尾秀夫さんのコレクションであるNゲージのジオラマが窓辺に飾られていることで有名で、行き交う人を楽しませてくれます。通学前に覗き込むのが日課の小学生もたくさんいますし、このお店なら喜んでカットに行くというちびっこファンもいます。

瀬尾さん自身、鉄道にとどまらず、バスも好きだし昆虫、爬虫類、阪神タイガース観戦にいたるまで多趣味な方で、お店の前ではメダカやトノサマガエルも飼育。多方面の話題で話せる理容師さんです。
ところでNゲージとは?オモチャのプラレールの大人版だと思っていた私、失礼しました。レール間隔が実物の1/148〜1/160に縮尺された鉄道模型で、線路幅9mmの「9」=Nineゆえ、Nゲージと呼ばれています。そこに走る車両模型は縮尺1/150。今回は4月29日に開催された「第5回子ども貨物イベント」を取材。このお店の魅力、Nゲージの魅力を体感しました。
自分がデザインした貨物列車がNゲージを走る!

子ども貨物というイベントは、真っ白なプラスチックの箱にシールを貼ったり色を塗ったりして、自分だけの貨物を作成し、実際にNゲージの車両が引っ張って走る様子が楽しめる、という内容です。企画の発案者である「えぬかーご」という二人組の若者が「この店内で開催したい」と持ちかけてきたのが3年前。今では好評につき、年2回開催されています。
店内にはNゲージの線路を自由につなげられるコーナーと、それぞれが持参した模型を走らせて楽しんでもらえるコーナーが開設されていました。「貨物を作るのは小さなお子さんが中心です。それ以外に、この日を楽しみに来てくれる鉄道ファン、Nゲージファンがたくさんいるんです」と瀬尾さんがおっしゃるとおり、店内は小さなお子さんから中学生、高校生、大人まで、たくさんの人が楽しんでいます。
模型鉄であり乗り鉄、撮り鉄、音鉄!

ジオラマで持参した模型を走らせていた中学二年生三人組。いつも門戸から散髪に来ている宙君(上の写真の左)はNゲージマニアのお父さんと駅弁にこだわりを持つ鉄道ファンのお母さんと二度目のイベント参加。門戸の家は、窓を開けたら新幹線が見えることで決めたというご家族。今回は同じ趣味の友達二人を誘って来ていました。
走る模型をスマホやiPadで撮る際は、よりかっこいい画角を探しつつ、模型感が出るよう心がけるのだそう。鉄道に乗るのも撮るのも好きなうえ、到着や発車時の音を録音するのも趣味という賢司君(写真中央)はJR岡山駅の「いい日旅立ち」をLINEの着信音、東海道新幹線の東京駅の「乙女の祈り」を目覚まし音にしていました(覚醒効果ある?眠くなりそうですが)。史悠君(写真右)は阪神電車の5001形、通称青胴車が「古臭いところが好きだ」と熱く語ってくれました。

小学校は違っても、仲良し鉄ちゃん

一方、小学1年生コンビの一陽君(上の写真左)と一咲君(写真右)。
幼稚園は一緒でしたが、小学校は別々になってしまいました。それでも、大好きな電車つながりで今も仲良し。通園の際に毎日このお店の前で立ち止まっていた一陽君は、参加回数なんと4回目。今日は一咲君も誘って来たから、楽しさ倍増したようで、軽く4時間ほど滞在していました。
Nゲージのスターターキットは、最近は以前より安くなってきているそうですが、それでも1万円ほど。電気系統は壊れやすく、車両も繊細なので、子どもには買ってもらえないし、家にあっても触らせてもらえないのが普通です。それが自由に触ったり、組み立てたりできるなんて、夢のような空間なのでしょう。
はたちの鉄ちゃんのお宝拝見

20歳の藤井さんには、最近のお気に入りのセット「ロマンシング佐賀」を見せてもらいました。ゲームボーイ用ロールプレイングゲーム「魔界塔士サガ」の発売25周年記念と佐賀県がコラボして、2023年12月から開始されたラッピング車両だそう。佐賀に住む親戚をよく訪ねることから愛着があって購入したものの「家で線路を出すのは面倒だし、飼い犬が寄ってくるので難しくて」と、試し運行にやって来たのでした。小さな鉄ちゃん、興味津々にのぞき込みます。

阪神が関西永住の決め手と語る、関東出身の鉄ちゃん

取材のトリを飾るのは、やはりこの車両でしょう。50代の上村さんは阪神電車コレクションを何セットもお持ちでしたが、赤胴車を見せてもらいました。東京生まれの上村さん、中央線の電車を見て育ってきましたが30代で転勤になり、武庫川駅そばに住んだと言います。不安だらけの関西でホームシックにならなかったのは、阪神電車のおかげだそうです。
「すぐそばに見える阪神電車にすっかり魅せられました。『みなさまの足 阪神電車』というフレーズも素敵ですし、電車の中を通り抜けて乗り換えるシステムなど、乗客想いですよね」と。同僚が阪神タイガースの試合にも誘ってくれて、勝っても負けても必死に応援するファンの姿にも感銘を受け、それまで野球に興味もなかったのに、タイガースにも心奪われ、関西、この阪神間に永住を決意したそうです。
取材を終えて

マツコの知らない世界ではないですが、Nゲージの精巧さに驚き、価格に驚き、楽しみ方に驚き、ファン層の厚さと熱さに驚いた取材でした。今、鉄ちゃんな人も、鉄不足な人も、一度覗けば知らない世界が広がります。貨物を作るのには要予約で参加費1,100円。見学や参加は無料です。秋にも開催予定なので『スーパーヘアーセオ』のホームページを要チェックです。
スーパーヘアーセオ 店舗情報
アクセス:阪神甲子園駅から徒歩約5分
住所:兵庫県西宮市甲子園五番町15-14
営業時間:9:00〜19:30
定休日:毎週月・火曜
電話:0798-46-7950