沿線お役立ちコラム

モネ 連作の情景 大阪中之島美術館で開催中

国内外40館以上からモネの貴重な作品が終結

こんにちは!美術館・博物館担当。チアフルライターの甲斐千代子です。

印象派を代表する画家の1人クロード・モネ。「連作」をキーワードに、時間や光との対話を続けた画家、モネの生涯に迫る「モネ 連作の情景」が大阪中之島美術館で開催中です。昨年秋から年始にかけて東京上野の森美術館で開催された展覧会が大阪に上陸しました。

クロード・モネは1840年、フランス・パリ生まれ、ノルマンディー地方のル・アーブルで絵を描きながら少年時代を過ごします。風景画家ブーダンと出会い、その手ほどきにより17歳の時に初めての油彩画を描きます。戸外制作を始めたのも、ブーダンの助言がきっかけでした。25歳の時にサロンに初入選するものの、その後は落選が続きます。

当時のフランス画家にとって、サロン(官展)が唯一の作品発表の場でした。モネは、ルノワールやマネらともに、新たな作品発表の場として、1874年「第一回印象派展」を開催します。

印象派とは、画家の目に入る映像の「印象」を描き出した絵画を特徴とする美術運動のこと。絵の具を原色のまま、素早い筆づかいでキャンバスに重ねる技法で、空間と時間による光や色の変化を表現しました。(光を描くため「黒」の絵の具を使用しないことがルールの一つだったんですって。)

モネの代表作≪印象・日の出≫が「印象派」の名前の由来だと言われています。

展覧会のタイトルにもある「連作」という手法にモネがたどり着くのは50代前半のこと、本展は連作に至るまでの過程とその後の展開を追いかける展覧会。、国内外40館以上から集めた約70点を展示しています。

「全てがモネの作品」という「100%モネ」をうたった展覧会です。では、いざモネの世界へ~

目指せサロン入選!印象派以前のモネ

19世紀当時のフランスでは、サロン(官展)が唯一の作品発表の場であり、評価を受ける場であり、最高の市場でもありました。若いモネも、このサロンでの入選を目指します。

1865年、初めてのサロン挑戦で2点の風景画が入選、翌年も人物画と風景画が入選を果たします。

幸先のよいスタートを切ったと思われましたが、その後は落選が続きます。

そんなモネのターニングポイントとなったのが画面左の大作、≪昼食≫。暗めの大きい画面に等身大の人物、まだ結婚を許されていなかった最初の妻カミーユと長男が描かれています。アカデミックな雰囲気を醸し出すこの作品はサロンに出品するために描かれましたが、結果は残念ながら落選。

この落選は、モネが過去の作風に決別し、印象派へと進んでいくきっかけとなったのです。

第一章では、モネの初期の作品、印象派以前の作品を展示しています。印象派とはかなり印象が異なる作品が並びます。

印象派の画家モネ 光をとらえる

第二章には1870年代から80年代の作品が並びます。

画面右の≪アトリエ船≫は大阪展のみ公開の作品です。

モネは移動手段としてではなくアトリエとしての船を考案し、それに乗ってセーヌ川やその支流を行き来し、様々な風景画を描きました。柔らかく明るい色彩の絵の具と斑点のような筆致によって、四季折々の風景がカンヴァスに写されていきます。

印象派の名前の由来ともなった≪印象・日の出≫が描かれたのもこの時期です。

テーマへの集中 やがて連作へ

モネは新たなモチーフを求めてヨーロッパ各地を旅し、同じ場所に数か月滞在することもあったそうです。

こちらの2つの作品、同じ岩を描いていますが、印象がかなり違います。左は1883年、右は1886年に描かれました。

ここはラ・マンヌボルト。英仏海峡に面して石灰岩が波で削られ穴が開いたような奇岩がいくつかある場所。その一つを描いたものです。陸路で行くのが困難な場所にあり、おそらくは船でギリギリまで近づいて制作されたとのこと。

それにしても、二つの画の違いは何なのか。

モネは、1883年の暮れから地中海、南フランスとイタリアに旅をします。南仏の明るい太陽のもとで見る景色が明るく、色鮮やかであることに気づき、自らの作品に取り入れていきます。作風の変化は、このあたりに由来するようです。

第3章では、旅先に滞在する中で、同じ風景、同じモチーフを、異なる季節や天候、時刻に描くことで、海や空、山や岩肌の表情の変化をとらえた作品が並びます。

1つのテーマを様々な角度からとらえるという姿勢が、「連作」へと繋がっていくのです。

連作の作家 モネ モチーフへのこだわり

1883年春、42歳のモネはセーヌ川下流域のジヴェルニーに移住します。

こちらは「積みわら」をモチーフにした作品たち、モネの初めての「連作」だと言われています。

当初、家畜の飼料として干し草を集めた積みわらや、脱穀米が入った積みわらを、空がありバックにポプラ並木があるという、ありのままの風景画として描いていましたが、その後作風に変化が現れます。それが一番右の≪積みわら 雪の効果≫です。冬に、明るい太陽が積みわらを照らし雪に映る。光と影のコントラストが強調され、計算されて描かれています。この作品は1881年、パリの画廊で展示された15点の連作の中の1点で、同じテーマで異なる絵を一堂に並べた「連作」という手法は、大絶賛され、モネの名声を確固たるものにしました。

展覧会ナビゲーター 芳根京子さん登壇

内覧会に先立ち、本展のナビゲーターであり、音声ガイドを担当した芳根京子さんが登壇。

「空間、光、壁の色が違うだけでこれだけ印象が違うんだと思う作品がたくさんあります。大阪でしか見られない作品もあります。(モネの魅力について)光や色彩が美しいのはもちろんなんですが、そんなわけないのになぜか香りを感じるんです。作品によってその場の空気が違うような気がしてとても引き込まれます。目だけでなく五感で楽しめる画家だなと思います。大阪がラストチャンスになるので、是非見に来てください」と話していました。

「モネ 連作の情景」

モネ 連作の情景

会期:5月6日(月・休)まで

開場時間:午前10時~午後6時 ※入場は午後5時30分まで

休館日:月曜日(4月1日、15日、22日、29日、5月6日は開館)

会場:大阪中之島美術館 五階展示室

https://www.monet2023.jp/

文/チアフルライター 甲斐千代子

エンカチライター

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