沿線お役立ちコラム

特別展『古代メキシコ –マヤ、アステカ、テオティワカン』国立国際美術館で開催中

古代メキシコの3つの文明に焦点を当てる

皆さんこんにちは!美術館・博物館・歴史担当、チアフルライターの甲斐千代子です。
大阪 国立国際美術館で、特別展『古代メキシコ –マヤ、アステカ、テオティワカン』が開催中です。
火山の噴火や地震、干ばつなど厳しい自然環境のもと、独自の発展を遂げた古代メキシコ文明の奥深さと魅力に迫ります。

モンゴロイドがアジアからベーリング海峡を渡って、新大陸(アメリカ大陸)に足を踏み入れたのは、今から約1万3000年前のこと。以来、紀元後16世紀のスペイン侵攻まで、温暖な湾岸地域から山に囲まれた中央高原、密林が広がるユカタン半島まで、独自の発展を遂げていきます。

第一章では、古代メキシコ文明のルーツともいえるオルメカ文明を紹介するとともに、「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」通底する4つのキーワードを解説しています。
そのキーワードとは①トウモロコシ ②天体と暦 ③球技 ④人身供犠。個々の解説は会場でご確認いただくとして、私は特に②天体と暦に注目しながら会場をたどっていきたいと思います。

会場内、撮影可能です。ルールを守って楽しみましょう!
では、心はメキシコの地へ、ルーラー!

第二章 3大ピラミッドを擁する神々の都「テオティワカン」

海抜2300mのメキシコ中央高原にある都市遺構、テオティワカン。現地「ナワトル語」で「神々の座所」を意味することばです。紀元前1世紀から紀元後6世紀までこの地で都市文明が栄えました。
碁盤の目状に作られた巨大な計画都市は、「死者の大通り」を軸に3つのピラミッドが並び、住居群が配置されています。
日没の方向に向けて建てられた「太陽のピラミッド」は、火・戦い・天空を象徴し、死者の眠る地下世界へと繋がる聖なる出入口でもありました。
「月のピラミッド」の頂点は、背後にそびえる聖なる山の頂上と重なるように設計されています。水、豊穣、大地、女性、雨季、そして、月を象徴していると考えられています。
そして、「羽毛の蛇ピラミッド」は金星と権力を象徴しているとのこと。

様々な出土品や発掘調査、研究成果とともに、テオティワカン文明の謎に迫ります。

第三章 マヤ 都市国家の興亡

紀元前1200年頃、ユカタン半島を中心に興り、長期にわたって栄えたマヤ文明。天体の動きは地上の出来事と密接に関係していると考え、太陽や月、金星など天体観測をし、それに基づいた精緻な暦を作りました。また、優れた文字体系も作り上げました。例えば数字の場合、点を「1」と横棒を「5」とし、の組み合わせで示しました。

画像左は≪金星周期と太陽暦を表す石彫≫
左が金星、右側が太陽暦の年を表しているそうです。

金星については、マヤ文明の古文書にも、「明けの明星(236日)」「地上から見えない時期(90日)」「宵の明星(250日)」「地上から見えない時期(8日)」からなる金星の周期が「584日」であると記録されています。

本章では、文明を支えた高度な知識と技術に焦点をあてます。

マヤの「赤の女王」初来日!

マヤの代表的な都市国家パレンケで発掘された「赤の女王」
7世紀、パレンケの黄金時代を築いたといわれるパカル王の妃とされています。1994年に発見されたとき、石棺の中で鮮やかな赤の辰砂(しんしゃ、水銀朱)に覆われていたので、「赤の女王」と名付けられました。
孔雀石(緑色の単斜晶系の鉱物、マラカイト)で作られたマスクは顔全体をすき間なく覆い、頭飾りはチャフクと呼ばれる鳥のような神様(目が渦巻みたいでお茶目)の顔を表しています。マヤの王家を象徴するケープには、ヒスイ輝石岩からなる円盤状のモノが装飾され、中央下には花の形と猿の形をした小さな石が施されています。

「赤の女王」は日本初公開、さらに、メキシコ国内とアメリカ以外でも初公開。一見の価値ありです!

第四章 アステカ チノチティトランの大神殿

14世紀にメキシコ盆地テスココ湖の中の島、現在のメキシコシティに首都を置いたアステカ。首都中心部には大神殿 テンプロ・マヨールがあり、人々が熱く信仰したウィツィロポチトリ神とトラロク神が祀られていました。、町は湖の湖岸といくつかの橋で結ばれ、多くの水路も築かれ、橋が渡されて、徒歩でもカヌーでも行き来することができたといいます。
アステカは強力な軍隊を持ち周辺地域を次々に支配下に置き、繁栄を謳歌していきます。

第四章では、アステカの彫刻作品とともに、近年発掘された金製品を展示しています。

音声ガイドと図録 おすすめします

音声ガイドのナビゲーターは上白石萌音さん。雨の神・ナレーションを声優の杉田智和さんが担当しています。
人はトウモロコシから生まれた?説、雨の神とは?など、様々な「なぜ」に応えてくれる内容。クイズも出題されます。
図録では、3つの文明について、さらに「赤の女王」の詳細な解説が載っています。展示物についての理解を深めたい方にお勧めします。

特別展『古代メキシコ –マヤ、アステカ、テオティワカン』 5月6日(月・振休)まで

特別展『古代メキシコ –マヤ、アステカ、テオティワカン』
会期:5月6日(月・振休)まで
会場:国立国際美術館
開館時間:午前10時~午後5時 毎週金・土曜日は午後8時まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
※ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館
https://mexico2023.exhibit.jp/

文/チアフルライター 甲斐千代子

エンカチライター

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