沿線お役立ちコラム

「決定版! 女性画家たちの大阪」展 大阪中之島美術館

英訳は「Osaka in the Eyes of Women Painters」

みなさんこんにちは!美術館・博物館担当、チアフルライターの甲斐千代子です。
19世紀後半から20世紀半ばにかけての近代大阪で活躍した女性日本画家の活動を、作品と関連資料から紹介する「決定版!女性画家たちの大阪」展が、大阪中之島美術館で開催中です。

タイトルの英訳は「Osaka in the Eyes of Women Painters」
『female』ではなく、『Women』 。文化的社会的な個人がフォーカスされたと女性という意味で、世界的なジェンダー研究のこだわりが込められた表現となっています。

近代大阪で多くの女性画家が活躍していたことは、全国的にも知られていること。といいつつも、大正期から昭和の初めの頃は、女性の活動が制限されていた時代でもありました。なぜ大阪でこれほど多くの女性画家が、活動・活躍できたのか…

本展を手掛けた大阪中之島美術館研究副主幹の小川知子さんによると、大きく二つの理由が考えられるとのこと。

「大阪にはお稽古ごとの伝統があった。船場の裕福な商家では妻や娘が様々なお稽古事をしていて、その中の一つが絵画(を描く)だった。官展への入選を目指すことなく、あくまでも教養の一つとして絵を描く女性たちがいて、その中から、本格的な画家を志す者が現れたことが一つ。もう一つは、東京や京都の画家たちは展覧会に入選してなんぼ、というところがあったが大阪はそうではなく、美術が生活の中に密着していた。(画壇に)ヒエラルキーがなく、選択肢も広かった。女性が活動しやすい環境だったのではないか」と話していました。

なるほど。当時の大阪には女性画家が活動・活躍できる伝統と環境があったんですね。
それでは、いざ、会場へ!いざ~!

先駆者 島成園

第一章は、大阪に女性画家の時代を拓いた、先駆者島成園の画業を紹介しています。
大阪生まれの島成園は父は絵師、兄は図案家で兄から絵の手ほどきをうけます。15歳ごろから独学で絵を学び始めます。大正元(1912)年、二十歳の時に文展(文部省美術展覧会)に入選、大阪からの文展入賞者は少なく、さらに「若い女性」という珍しさもあり、成園の名は全国的に知れ渡ります。当時の画壇は東京と京都が中心で、女性画家では東京の池田蕉園、京都の上村松園と二人の「しょうえん」が活躍しており、島成園と合わせて「三都の三園」と称されました。。

画面右側の作品、タイトルは≪無題≫。成園の自画像です。顔面の左側には、実際には無かった痣が描かれています。
成園はこの絵について「痣のある女の運命を呪い世を呪う心持ちを描いた」と語っていたとのこと。全国的に有名になることで、様々な誹謗中傷もあったそうです。心の傷を痣という形で表現しようとした作品です。

成園の作品の中で、私が心惹かれたのは画像真ん中の作品≪美人愛猫≫。腕に抱かれているにゃんこの愛らしさにキュン♡です。
(いわゆる「ハチ割れ」模様のにゃんこ。末広がりで縁起が良いとされる漢数字の「八」に見えることからその名がついたとか。脱線失礼)

美術界に新風を吹き込んだ女四人の会

第二章のテーマは女四人の会。
このグループは島成園の文展入賞により勇気づけられた、20代前半女性たちで結成されました。
メンバーは、島成園を中心に、20歳前半までに文展に入選した岡本更園、木谷千種に、松本華羊を加えた4人。
花街ではなく一般の女性たちの恋物語を描いた井原西鶴の『好色五人女』という浮世草子を研究し、4人それぞれが担当を決めて作品を描きます。翌年には大阪の三越で展覧会「女四人の会」展を開催。「女が生意気なことをやっている」と批判を受ける一方で、画期的なことだと称賛の声もありました。まさしく大正デモクラシーの一環であったともいえます。

第三章は南画や花鳥画といった伝統的な絵画を
第四章では、大阪の歴史や風俗を描いた生田花朝とその郷土美術。
第五章は、その他の画家たちの作品を展示しています。(第五章のみ写真撮影が可能です)

50名を超える画家の約150点の作品

会場には50名を超える女性画家の作品約150点が並びます。画家それぞれにどのような背景があり、作品にはどんな思いが詰まっているのか。解説の音声ガイドがおすすめなのですが、ちょっと待った!
まずは、1回目は真っ白な気持ちで会場を回り、自分なりの解釈と想像力をフル回転して観てほしいです。
そして、2回目に音声ガイドで解説をお聞きいただきたい。今回は大阪出身の俳優、木南晴夏さんが担当、作品解説に加えて、女性画家の想いを「大阪弁」で語っています。(これが味があっていいのです!)
さらに、もう一度、会場を回ると!新たな発見ができるかもです。

関連イベントも充実

本展は関連イベントも充実しています。

2月18日(日)に
講演会「女性が絵を描くということー百年前の大阪を追想して」
14時~15時30分開催で、定員は150名。先着順で事前申し込みは不要、聴講無料ですが、本展の観覧券が必要です。(会場:大阪中之島美術館 1階ホール)
上記の講演会を聞けば、本展への理解がさらに深まるはず!是非ご参加ください。

「決定版!女性画家たちの大阪」は2月25日(日)まで

本展は、前期後期で展示替えがあります。是非近代大阪で活躍した女性画家たちの息遣いを感じてみてください。

「決定版!女性画家たちの大阪」
会場:大阪中之島美術館
前期:1月21日(日)まで
後期:1月23日(火)~2月25日(日)
※会期中、展示替えがあります。
開場時間:10時~17時(入場は16時30分まで)
休館日:月曜日 ※ただし、2月12日は開館
https://www.ktv.jp/event/wosaka/

文/チアフルライター 甲斐千代子

エンカチライター

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