食材の切り方と栄養
今回のテーマは、食材の切り方と栄養についてです。どんな栄養素を摂ったらよいか、という点ではこれまで何回かお話があったと思いますが、栄養を摂ることについて、どのように切って食べるのか、ということも実は差が出ることがあります。今回は特に食材の切り方について、見てみましょう。
食べ物の繊維に対して、どのように包丁を入れるのかで食感は変わってきます。例えば、セロリを縦に細長く繊維の筋に沿って切るとシャキッとした歯ごたえが残りますが、横に繊維の筋を断ち切っていくと、歯ごたえを抑えることができます。
切り方と味・栄養
味と栄養についても変化があります。例えばレモンの櫛切りで、細胞を断ち切るように垂直に切ったものと、細胞に沿って切ったものを比較すると細胞に垂直に切ったほうが壊れた細胞が出口となり果汁の出方が早くなります。このように細胞にどのように切り目を入れるかで食材の味や栄養のあり方は変わってきます。
例えば腎臓機能が低下した方はカリウムが体内に溜まりやすい為、カリウム値が高くなった時は食材のカリウムを減らす方法として、輪切り・みじん切りなど細胞を断ち切るように切ってから食材を水にさらし、水にカリウムが流れ出すことで野菜自身のカリウムを減らすことができます。それに対して、高血圧の人は反対に体内のナトリウムを体外に排出する為にカリウムを野菜に残して摂取したほうがよいので、切る前に洗って、切るときは細胞に沿って切ったほうが、野菜にカリウムが残ります。このように、栄養の摂り方を変えることができるのです。
また、ビタミンについては、切ると減る、加熱すると壊れる、など様々な情報があります。
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)
油に溶けるビタミンなので、切り方に左右されることはありません。
細かく切って大量の油に入れて炒めると、油に逃げてしまうので、炒めるときは大きめに切るほうが良いかもしれません。ドレッシングをかけて、サラダで食べるときは食べやすい形でよいと思います。
水溶性ビタミン(B群・Cなど)
水に溶けるビタミンであるため、調理方法として、レンジや蒸し器で「蒸す」と残りやすいといわれています。細かく刻んで水にさらすと食材ではなくさらした水や煮汁に逃げていきます。
食材から直接そのまま摂ることを考慮すると、先に洗っておいて、繊維に沿って切り生で食べることが上手に摂取する方法です。
ビタミンCについては加熱で壊れるのは2割程度とされているので、煮汁ごと摂取することなどで損失を少なくできます。
ミネラル(ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウムなど)
お水を購入される方はその成分に、ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウムなどが記載されているのを見かけることがあるかと思います。水に溶けるものなので、減らしたければ、繊維に垂直に細かく切る、残したければ、繊維に沿って細胞を壊さないようにするとよいでしょう。
ただし、浸透圧といって、2つの濃度の違う水が隣り合わせたときに、濃いほうから薄いほうへ濃度をそろえるようにミネラルは動きます。例えば
お漬物を水にさらす⇒お漬物の塩分は周りの水に移動する
野菜を塩水につける⇒塩が野菜に移動する
このように、一概に切り方だけで食材にミネラルを残す・残さないということは決められないところがあります。
まとめてみると・・・
①食感・素材の味やビタミンを残すとき=繊維に沿って切る。細胞を残す。
歯ごたえがでて、満腹感にもつながりやすいです。
例:サラダ、炒め物など満腹感を出したいなど
②柔らかく・味をしみやすくしたいとき=繊維に垂直に切る。細胞を壊す。
歯が弱っているとき、胃腸が弱っているときなどは食べやすくなります。
例:酢の物・煮物など
ということになります。
<今回のレシピ>
麺つゆで、5分で簡単、豚の生姜焼き
材料
豚肉(生姜焼き用) 3~4枚
麺つゆ(2倍濃縮) 小さじ2杯程度
おろししょうが チューブ1~2cmぐらい
合わせておく
(お好みで調整)
添え野菜 適宜(千切りキャベツ、ミニトマト、スライスきゅうりなど)
①豚肉をしっかり焼く
②麺つゆとおろししょうがを合わせておく
③お肉にしっかり火が入ったら②をかけて照りが出るまで煮詰めて出来上がり。
ちょこっとpoint
これから暑くなりますね。豚肉のビタミンB1、冷房の冷えに対して体の血流をよくしてくれるしょうがなども良い味方になります。豚肉は味がしみこみやすいように筋だけでなく軽く包丁を入れておくと良いと思います。時間のある方は生のしょうがをすり下ろすほうが香りも味もしっかりしています。食感や風味を感じたい方は千切りしょうが、香りを楽しみたい方はスライスのしょうがでも良いと思います。
さらにスタミナをつけたいときは、スライスにんにくを足す、ボリュームアップしたい時はたまねぎの櫛切りを足して食感を感じるようにしてみてはいかがでしょうか。