沿線お役立ちコラム

76点が日本初公開「ピカソとその時代展」@国立国際美術館

稀代のコレクター ベルクグリューンの名を冠した美術館のコレクション

こんにちは!美術館・博物館担当、チアフルライターの甲斐千代子です。

「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」が大阪市北区の国立国際美術館で開催中です。

 

ハインツ・ベルクグリューンは1914年、ドイツ・ベルリンのユダヤ人家庭に生まれます。1936年、ナチス政権の抑圧から逃れアメリカに渡り、美術に関わる仕事に就きます。第2次世界大戦後にはパリで画廊を経営、ピカソ、マティスなど世界的な画家や文学者と交流を持つなかで、美術作品の収集にも精力的に取り組みました。

 

ベルクグリューン美術館は、彼が築き上げたコレクションが礎となり誕生しました。

本展は、同館のコレクションから厳選した97点の作品に、日本の国立美術館所蔵・寄託作品11点を加えた108点で構成されています。

しかも!76点が日本初公開。さらに!嬉しいことに会場内一部の作品を除いて写真撮影が可能です。

さあ、スマホやデジカメを手に、ピカソ、マティス、クレー、ジャコメッティ、20世紀を代表する4大巨匠の世界へ、いざ、いざ~!(撮影する際は周囲への配慮をよろしくお願いいたします)

ピカソの画業をたどる濃密なコレクション

会場に並ぶピカソの作品は46点(国内3点を含む)。

親友の死に影響を受け、沈んだ色調で悲し気な題材を描く「青の時代」

恋人ができ明るい色も取り入れた「バラ色の時代」

点や線を再構成することでモノの本質を描こうとした「キュビスムの時代」

「新古典主義時代」「シュルレアリスムの時代」と、作品の変遷をたどることができます。

 

左の作品は≪座って足を拭く裸婦≫

古典的、写実的な表現で独自の作風を目指した「新古典主義時代」に描かれた作品です。

 

(女性のポーズは古代彫刻を想起させ、椅子に掛けられたドレープの効いた布はまさに古典的な表現なのに、水平線はガタガタゆがんでいるし、女性の手足がデフォルメされ、そのサイズは大きくアンバランス。違和感のような、居心地の悪さを感じる、その一方で視線を外すことができない、この絵の魅力って何なのでしょう)

主義 手法にとらわれない クレーの世界

スイスの画家パウル・クレー。「芸術は見えないものを見えるようにする」と主張していた彼の作品は、主義や手法にとらわれない独特のものでした。

 

この二つの作品は同じ1921年に描かれました。

左は、空間に対して幾何学的なアプローチをとり、遠近法を取り入れた作品

右は、風景画のようにも見える、建物、月、植物などが重なるように、クリスタルのように描かれています。

同じ年に同じ作家が描いたのにこの違い!

 

さらに注目して欲しいのが使用している画材です。水彩、鉛筆、厚紙に貼った紙、凹凸のある壁紙などなど、通常の「キャンバスに油彩」というのはほとんど見られません。

 

画材の質感も含めて、クレーのバラエティに富んだ作品たち、じっくりと楽しんでほしいです。

色彩の魔術師 マティス

アンリ・マティスはフランスの画家であり彫刻家、自身の感情を独特の色彩感覚で描いた作品を次々と生み出し「色彩の魔術師」とも呼ばれています。

 

そのマティスが晩年手掛けたのは切り絵でした。助手が水彩絵の具の一種・グアッシュで紙に色を塗り、それをマティスがはさみで切り、紙などに貼り付けて構成するという方法で制作されました。

 

画面奥中央の≪植物的要素≫

赤い紙の上に、黄色、青、緑の曲線的な形態を繰り返すモチーフが描かれ、その周りには黒くて小さいモチーフが展開。リズミカルな音楽が聞こえてきそうな作品です。

これらの植物の葉のようなモチーフはマティスの作品にたびたび登場し、形もその持つ意味も様々なバリエーションが生まれていきます。

本質を形に ジャコメッティの人物彫刻

アルベルト・ジャコメッティ。

針金のように極端に細く長く引き伸ばされた人物彫刻で知られる、スイスの彫刻家です。

彼は見えるがままに彫刻すること、見えるものを見えるとおりに表すことを追求し続けました。

 

(といいつつ、実際の「人間」とはかけ離れたフォルムですよね。あんな細長ーい人、いませんよね。

彼が目指したものは、形をそのまま描くのではなく「本質的なもの」を表現したのかもしれません。)

 

そのジャコメッティの像と、ピカソが手掛けた鶴の立体作品が、視線を合わせているように展示されています。

 

鶴「細いな、人間」

人「お前こそ」

(と言った会話が聞こえてきそうです)

 

会場のラストは、複数の作品の対比を楽しめる空間となっています。

音声ガイドのすすめ グッズも充実

本展覧会、音声ガイドの担当は俳優の長谷川博己さん。でも、まずは解説なしで会場を一巡り。自分の感性でしっかりと作品を受け止めた後、解説に耳を傾けることをおすすめします。

 

個々の作品をさらに深く極めたい方は図録を手にしてみてください。痒い所に手が届く、細かい解説が魅力です。

ショップには魅力的なオリジナルグッズが並びます。ご家族やお友達へのお土産に是非。

「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」5月21日まで

「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」

会期:2023年5月21日(日)まで

休館日:月曜日(5月1日は開館)

会場:国立国際美術館

入場料:一般 2100円 大学生1300円 高校生 900円 

 

公式サイト

https://www.mbs.jp/picasso-and-his-time-osaka/

稀代のコレクターが選び抜いた、20世紀美術のエッセンスが楽しめる展覧会、是非足をお運びください。

 

 

文/チアフルライター 甲斐千代子

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