脂質を考えよう!
今回は脂質をテーマにお話しさせていただきます。
皆さん「脂質」と聞くと「太るから敵!」と考える人もいれば、近年流行りの中鎖脂肪酸(MCT)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω-3脂肪酸を積極的にとらなければいけないのではないか、と思われる方など様々だと思います。今回もまた何が正解・不正解ということはありませんが、管理栄養士からの目線で脂質のお話をさせていただきたいと思います。
脂質の働きとは?
脂質は主な働きとして体調を整えるホルモンや、体を構成する細胞膜の材料になることが挙げられます。もちろん、エネルギーを作り出す役割もあります。
脂質の分類
まず、脂質の分類について一つずつ見てみましょう。
①単純脂質
脂肪酸+グリセロールの合体したもの
例:トリグリセリド
グリセロール1個に対し3個の脂肪酸が付くと、トリ(3の意味)グリセリドとなります。食物から摂取できる単純脂質のほとんどは、トリグリセリドです。モノ(1)グリセリドやジ(2)グリセリドは、自然の食べ物からはほぼ摂ることができません。
②複合脂質(①の単純脂質+何かが引っ付いたもの)
リン脂質=①の単純脂質にリン(またはリンを含むもの)が引っ付いたもの
例:卵黄レシチン
卵を使うと、お酢と油が混ざり合ってマヨネーズになります。水と油2層に分かれず混合することを「乳化」といいます。これは「卵黄レシチン」というリンを含む脂質=リン脂質が働いています。
糖脂質 =①の単純脂質に糖(または糖を含むもの)が引っ付いたもの
③誘導脂質(①の単純脂質や②の複合脂質が分解して出てくるもの)
コレステロール
単純脂質や複合脂質が加水分解という分解をしてできた「ステロイド」という形を持った化合物です。皆さんが健診で数値を気にするHDL・LDLコレステロールはもちろん、薬品にも使用される「ステロイドホルモン」の材料でもあります。
脂肪酸(①の単純脂質からグリセリンが外れた状態)
「飽和脂肪酸」:炭素の二重結合がない
「不飽和脂肪酸(一価・多価)」:炭素の二重結合を持つ
さらに不飽和脂肪酸の中の分類に二重結合がどこにあるかという分け方があり、一価不飽和脂肪酸で「ω-9(オメガ9)」、多価不飽和脂肪酸で「ω-3(オメガ3)」「ω-6(オメガ6)」というようなものがあります。
また炭素分子の量に応じて、「短鎖脂肪酸(SCFA、炭素数6以下)」「中鎖脂肪酸(MCT、炭素数8・10)」「長鎖脂肪酸(LCT、炭素数12以上)」という分類もあります。
油脂の毒性とは?
一番に浮かぶデメリットは、カロリーが高くて太ることだと思われる方も多いかと思います。もう一つ重要なものは、「酸化」というものです。油脂の形が変わってしまうことで過酸化脂質というものができます。
酸化は、特に脂肪酸の二重結合にかかわってきます。加熱したり光に当たったり、水分が混ざったりすると、この二重結合が多いほどその結合が切れて酸化しやすくなります。過酸化脂質を摂取することで下痢や嘔吐を引き起こしたり、また長期にわたると血管や内臓にも障害を生じることがあります。油が酸化した時は、泡が出る、臭いが変わる、粘り気が出る、色が変わるなど変化がありますので、そのような際は使用しないようにしましょう。
加熱に向いている油=二重結合がない、または1つ
①飽和脂肪酸(二重結合を持っていない)
バター・ラード・ココナッツオイル
②一価不飽和脂肪酸(二重結合が1つ)
オリーブオイル・アーモンドオイル・パーム油・こめ油・菜種油・アボカドオイルなど
加熱に向いてない油=二重結合が2つ以上あるもの(多価不飽和脂肪酸)
えごま油・亜麻仁油(いずれもω-3系)、ごま油・大豆油・コーン油・グレープシードオイル(いずれもω-6系)など
ちなみに、サラダ油は原材料としてゴマ・大豆・菜種・綿実・コーン・紅花・ひまわり・グレープシード・米などを利用し、低温でも濁ったり固まったりしないように精製されているものです。これらの原材料の中には加熱しないほうが良いものも入っていますね。これに対してキャノーラ油というのは、菜種の一種なので一価不飽和脂肪酸であり、加熱にも向いているということになります。
EPAやDHAはω-3系の多価不飽和脂肪酸です。
短鎖脂肪酸(SCFA)・中鎖脂肪酸(MCT)・長鎖脂肪酸(LCT)については、飽和脂肪酸として短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸と二重結合のない長鎖脂肪酸、不飽和脂肪酸として二重結合のある長鎖脂肪酸、と考えるとよいです。
注意点として、中鎖脂肪酸は飽和脂肪酸に分類されますが、揚げ物などの調理を行うと普通の揚げ物の温度より低めの温度で発煙しやすく焦げやすくなります。そのため、揚げ物や炒め物での使用より、ご飯を炊くときやケーキを焼くときに他の材料と混ぜるような使用が推奨されます。
短鎖脂肪酸は直接摂るのではなく、食物繊維などを摂取して腸内細菌が作り出したものなどが有効であること、長鎖脂肪酸に必須脂肪酸のリノール酸とリノレン酸があること、短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は素早く肝臓に到達しエネルギー化されやすいことを知っておくとよいと思います。
<今回のレシピ>
サクサクほろほろ幸せ気分 スノーボール
材料 (10~15個分ぐらい)
アーモンドプードル30g【A】
粉糖15g【A】
米粉30g【A】
こめ油25g
粉糖(仕上げ用)適宜
作り方
1.【A】を計量して混ぜてふるいにかける
2.こめ油を足して練り、冷蔵庫でしっかり冷やして、スプーンで丸くコロコロにする
3.オーブンを160度ぐらいに温めておき、天板に並べて10分程度焼く
4.仕上げに粉糖をかける
ちょこっとpoint
こめ油の代わりにバターで作ることもできます。こめ油の場合は種が柔らかいため、しっかり冷やし固めてから丸めるほうが作りやすいです。
トースターでも焼けますが、焦げやすいため5分弱で焦げ目がついたらあとは余熱が取れるまでそのままトースターに入れておくとよいです。
脂質の働きにはいろんな形があり、コレステロールなどの脂質も体内で作られるぐらい生きる上で必要なものである、ということに間違いありません。ただし脂質を多く摂りすぎれば、血管の閉塞が起こったり、肝臓に脂肪がたまったり、体重が増えたりと様々な問題が生じます。やはり適度な摂取量にしておくことが大切です。
近年の傾向としていろんなタイプの油脂類が店頭に並んでおり、どれを摂るか、摂り方を選ぶことは大事です。しかし、エネルギーとして得られるものは一緒なので、「質が良い=絶対必要・たくさん必要」と考えないで、使用する場面に応じて「あの脂質を選ぶよりこれを使おう」とうまく使い分けしていただければと思います。