沿線お役立ちコラム

阪神甲子園球場100周年ラッピングトレインde学ぶ野球漫画史

「阪神甲子園球場100周年記念ラッピングトレイン」が運行開始

神戸在住、オールド漫画ファンのチアフルライターやまさんです。第104回全国高等学校野球選手権大会が8月6日に開会し、8月22日に閉会しました。その舞台となった甲子園球場は2024年に100周年を迎えます。その記念事業の1つとして、8月1日から「阪神甲子園球場100周年記念ラッピングトレイン」が運行を開始しました。この車両には、数ある高校野球漫画の中から名作漫画9作品がラッピングされています。昔からちばあきお先生の作品が大好きなやまさん、「プレイボール」の主人公谷口くんのイラストを見に甲子園駅へ行ってきました。

戦後テレビの普及とともに到来した空前の野球ブーム

写真:甲子園駅のプラットホームから見た阪神甲子園球場

 

戦後、日本の野球はGHQの主導により、1945年11月23日に行われた東西対抗戦で早くも復活し、翌年3月27日にはペナントレースが再開されました。現在と違いピッチャーよりもバッターが注目された当時、赤バットの川上哲治(巨人)、青バットの大下弘(セネタース)、物干し竿(長いバットの意味)の藤村富美男(阪神タイガース)が人気選手で、この頃が第一次野球ブームとされています。

 

1947年、「漫画少年」という雑誌で井上一雄氏による『バット君』の連載が始まり、当時の野球少年達のあいだで人気となりました。この『バット君』が日本初の野球漫画と言われています。その後、長嶋茂雄、王貞治が登場した第二次野球ブームが到来します。テレビの普及と相俟ってプロ野球は国民的娯楽となり、「巨人大鵬卵焼き」が1960年代の子どもたちが好きなものの代名詞となりました。野球ブームが追い風となり、この頃から少年漫画雑誌には数え切れないほどの野球漫画が登場しました。

ラッピングトレインは野球漫画の歴史絵巻

しばらくすると、お目当てのラッピングトレインが4番ホームに入線してきました。POPな色使いが多い阪神電車にしては、かなり独特な車体色です。甲子園球場のアイビーをイメージしたのでしょうか?シックで100年の伝統を感じさせる色です。

 

この特別仕様のラッピングトレインには本線の急行用主力として活躍している8000系車両が使用されており、6両1編成のみ運行されています。走行区間は阪神本線の大阪梅田~元町駅、神戸高速線の元町~西代駅、山陽電鉄本線の西代~山陽姫路駅。現在、阪神電鉄のホームページにラッピングトレインの運行予定表(8月31日まで)が掲示されていますので、ラッピングトレインが見たい方はこの予定表を目安におでかけください。

 

阪神甲子園球場100周年ラッピングトレインには、甲子園にゆかりのある名作野球漫画9作品がラッピングされています。ひとつひとつ見ていきましょう。

巨人の星

1966年~1971年まで週刊少年マガジンで連載された、梶原一騎先生原作・川崎のぼる先生作画『巨人の星』。スポーツ根性漫画といえばこれ、というほど高い知名度を誇る漫画です。やまさん的には、主人公の父星一徹が戦前からプロ野球選手として活躍した過去を持つことから、日本の野球を戦前から振り返ることができる興味深い作品です。ラッピングには阪神タイガースの選手だった花形のほうが大きく描かれています。花形は戦前戦後に活躍したタイガースの「物干し竿」こと伝説の強打者藤村富美男氏の背番号10(永久欠番)を受け継いでいます。

プレイボール

やまさんイチオシの谷口くんを発見しました!谷口はちばあきお先生の野球漫画の不朽の名作『キャプテン』『プレイボール』の主人公です。このイラストは「『プレイボール』の谷口くんとチームメイトたち。『プレイボール』は1973年~1978年まで週刊少年ジャンプで連載されました。ちば先生がこの漫画を描いていた頃、野球漫画といえば魔球や必殺技を繰り出す非現実的なものが乱立していました。ちば先生はそんな野球漫画の中でも、地味でこれといった才能もない少年が人一倍努力をすることだけを武器にチームメイトを引っ張っていく、という新しいタイプの主人公像を描き、人気を不動のものとしました。谷口くんの中学野球時代を描いた漫画『キャプテン』には今も根強いファンが多く、イチロー氏や新庄剛志氏など、プロ野球選手もファンであることを公言しているそうです。

 

ちばあきお先生はボクシング漫画の名作『あしたのジョー』の作者であるちばてつや先生の弟さんです。ちばてつや先生も原作付きで『ちかいの魔球』という野球漫画を描いています。

ドカベン

野球漫画の大御所、水島新司先生の『ドカベン』は、1972年に週刊少年チャンピオンで連載を開始しました。一説によると、『ドカベン』を研究すればヒットする漫画のセオリーが一通り身につくと言われるほど、この作品にはストーリーテリングの醍醐味が詰まっています。水島先生は『ドカベン』以外にも数多くの名作野球漫画を描きました。本作が連載終了したのは1981年ですが、ドカベンシリーズが終了したのはなんと2018年だそうです。水島先生は球界に貢献した人物として2000年に野球の殿堂入り候補者に選出され、今年の1月10日、ファンに惜しまれつつ永眠されました。

タッチ・H2・MIX

「甲子園に連れてって」の台詞で有名なあだち充先生の『タッチ』は、1981年から1986年にかけて週刊少年サンデーに連載されました。あだち先生はそれまでの泥まみれで汗臭い野球漫画に初めて爽やかな青春ラブストーリー要素を取り入れ、野球ファン以外の読者取り込みに貢献しました。ラッピングには同じくあだち先生による野球漫画『H2』『MIX』のキャラクターも描かれています。現在ではあだち先生が最も長く野球漫画を描いている作家になるのではないでしょうか。

ROOKIES

森田まさのり先生の『ROOKIES』は、1998年から2003年まで週刊少年ジャンプで連載されました。不良少年たちが夢の甲子園を目指すという、これまでの野球漫画の流れとはかなり異なる新しいタイプの作品です。『ROOKIES』はテレビドラマ化、映画化され、大ヒット作となりました。

ダイヤのA・ダイヤのA actⅡ

寺嶋裕二先生の『ダイヤのA』『ダイヤのA actⅡ』です。『ダイヤのA』は2006年から2015年まで、続編『ダイヤのA actⅡ』は2015年から連載を開始し、現在も週刊少年マガジンで連載中です。こんな高校生活を送りたいと思わせるようなリアルな作風で若い読者の心を掴んでいます。

 

今回ラッピングトレインにコラボされている漫画を見ると、甲子園だけでなく、甲子園を舞台とした野球漫画もまた長い年月の間、世代を超えて描かれ愛されてきたことがわかります。そして甲子園をテーマとした漫画は山ほどあっても、甲子園の運営会社阪神電鉄がこれだけの数の野球漫画をラッピング車として取り上げたことはかつてなかったのではないでしょうか。今回のラッピングトレインはさしずめ野球漫画の歴史絵巻といった仕上がりになっています。漫画ファンのやまさんとしては嬉しい限りです。

女性作家が描いた野球漫画も

写真:ラッピングトレインの車内は甲子園球場100周年記念の広告で統一されています

 

ラッピングトレインの選から漏れた作品にも素晴らしい漫画、面白い漫画がたくさんありますから、気になった作品をチェックしてみてくださいね。特に女性作家が描いた『おおきく振りかぶって』『バッテリー』『甲子園の空に笑え!』『青空エール』、女子野球チームを取り上げた『なでしこナイン』『大正野球娘。』などはチアフルライター通信の読者の皆さんにも共感できる点が多いのではないでしょうか。

記憶のどこかに、その聖地はある

「阪神甲子園球場100周年ラッピングトレイン」に描かれたキャラクターたちを見れば、どの世代の人も「あの漫画を読んでいた頃はこんなことがあったな」という、ある種の感慨を覚えることと思います。イラストのそばには「記憶のどこかに、その聖地はある」というフレーズが添えられています。

 

『巨人の星』1966~1971年

『ドカベン』1972~1981年(シリーズ終了は2018年)

『プレイボール』1973~1978年

『タッチ』1981~1986年

『H2』1992~1999年

『ROOKIES』1998~2003年

『ダイヤのA』2006~2015年

『MIX』2012年~連載中

『ダイヤのA actⅡ』2015年~連載中

「阪神甲子園球場100周年記念マンガコラボムービー」企画がスタート

 

阪神甲子園球場100周年記念サイト」では「阪神甲子園球場100周年記念マンガコラボムービー」企画として8月1日から上記9作品の漫画をコラボしたムービーの第一弾「聖地・甲子園篇」がアップロードされています。今後、第二弾以降のムービーも順次登場する予定です。YouTubeの阪神甲子園球場チャンネルなら、感想コメントをつけることもできます。

デジタルアルバム「あなたと創る甲子園100年メモリーズ」に参加しよう

 

甲子園に来場した選手、ファン、関係者などの甲子園と縁のあった人々と共に、甲子園での思い出を振り返る「あなたと創る甲子園100年メモリーズ」企画も始まっています。これは甲子園でのみんなの思い出の写真をデジタルアルバムとして共有するもの。応募写真は特設サイト上で公開するほか「阪神甲子園球場100周年記念ラッピングトレイン」車内で中吊りポスターによるギャラリー展示を予定しています。また、応募者の中から抽選で100周年オリジナルグッズがプレゼントされるそうです。応募詳細は特設サイトまで。

 

そのほか、2022年12月10日と11日には少年野球の全国大会「MIZUNO BASEBALL DREAM CUP Jr.Tournament2022」の全国大会ファイナルラウンドが甲子園で初めて開催されます。

 

甲子園球場には「甲子園歴史館」が併設されており、「まんがと甲子園」コーナーで壁面いっぱいに掲示された甲子園にまつわる野球漫画のイラストを見ることができます。

 

ラッピングトレインは、甲子園球場がちょうど100周年を迎える2024年の12月頃まで運行する予定です。皆さんも甲子園球場や甲子園歴史館へおでかけしたり、ラッピングトレインに乗ったりしてみてくださいね。

 

関連情報・参考サイト

【情報】

「阪神甲子園球場100周年記念マンガコラボムービー」特設ページ

「あなたと創る甲子園100年メモリーズ」特設ページ

MIZUNO BASEBALL DREAM CUP 2022 JUNIOR TOURNAMENT

 

【参考】

阪神電気鉄道株式会社ニュースリリース 2022年8月1日

野球漫画展覧場HP

 

文/チアフルライター やまさん

やまさんの過去の記事はこちら

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