ラファエロ ベラスケス レンブラント 美術史に輝く巨匠たちの競演
こんにちは!美術館・博物館担当、チアフルライターの甲斐千代子です。
ラファエロ、レンブラント、ベラスケスなど「THE GREATS(ザ・グレイツ)」の名にふさわしい西洋画家の巨匠が描いた作品を通して、西洋美術史の流れをたどる「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」が、阪神神戸三宮駅から徒歩約11分の神戸市立博物館で開催中です。
スコットランドは英国の北部にあり、南部のイングランドとは異なる気候風土の中で独特な歴史と文化を育んできました。首都エディンバラは、中心地が旧市街と新市街に分かれ、世界遺産にも登録されています。
スコットランド国立美術館はそのエディンバラにあります。
1859年のスコティッシュ・ナショナル・ギャラリーの開館以来、スコティッシュ・ナショナル・ポートレート・ギャラリー、スコティッシュ・ナショナル・ギャラリー・オブ・モダン・アートと美術館の数を増やし、規模を拡大しながら、コレクションを拡充してきました。ルーブル美術館のように古くからある王室のコレクションが元となっているのではなく、19世紀になってから新たに構築された美術館で、地元の貴族や名士らの寄贈や寄託などによりコレクションの充実を図ってきました。
現在、所蔵品は約12万点、中世から現在に至るまでの西洋美術史をカバーしつつ、英国、特にスコットランドの芸術家たちの作品に関しては唯一無二のコレクションを形成しています。その充実したコレクションを一目見ようと、毎年230万人もの人たちが訪れます。
本展は、スコットランド国立美術館の所蔵品の中から選りすぐった89点を展示、そのうち75点が日本初公開の作品です。(1991年以降のスコットランド国立美術館の記録による)
会場を巡ることで西洋美術の長い道のりを歩んでいく、タイムスリップのような「壮大な美の旅」を感じてもらおうという趣向です。
では、その「壮大な美の旅」へ…
プロローグと 第1章 ルネサンス
最初に迎えてくれるのは、この作品。≪アメリカ側から見たナイアガラの滝≫はアメリカの画家チャーチの作品です。スコットランド出身でアメリカに渡って成功した実業家が、母国のためにと寄贈したものです。スコットランド国立美術館のコレクションの特質を印象づける作品でもあります。
(滝を望む展望台には小さな人影が二つ、流れ落ちた先には虹もかかっています。スケールの大きさを感じます!)
「酷暑の続く日本の夏、この作品で清涼感をお届けできれば」というのは本展担当学芸員のひとり高橋佳苗さんからのメッセージです。
第1章はルネサンス。14世紀から16世紀にかけて、イタリアのフィレンツェ、ヴェネツィア、ローマを中心に花開いた芸術文化を紹介しています。大型の作品が多いのも魅力的ですが、素描作品にも注目です。
画像右側≪美徳の寓意(未完)≫は未完の作品。中央の人物と右隣のおそらく犬が茶色の輪郭線で描かれるのみ。他の部分は高度に完成されているにも関わらず!なぜ、このような状態になったのか、諸説あるんですが… 。詳細は図録の解説でご確認ください。
第2章 バロック 明暗差と豊かな色彩
第2章はバロック。主に17世紀の作品を紹介しています。この頃からイタリアのみならず様々な国で芸術文化が栄えてきます。
バロック絵画の特徴は、強い明暗差、豊かな色彩、ドラマのある題材の3つと言われています。
ディエゴ・ベラスケス。バロック期に活躍したスペインの画家です。エドゥアール・マネが「画家の中の画家」と呼び、スペイン絵画の黄金時代であった17世紀を代表する巨匠です。
そのベラスケスが18,19歳の頃に描いた≪卵を料理する老婆≫。
宮廷画家になる前の若きベラスケスが描いた傑作です。当時スペインで流行していた「ボデゴン(厨房画)」で、少年と老婆の肌や衣服はもちろん、陶器、金属の器の質感の違いなどが巧みに描かれています。
注目は、卵料理!油をかけながら、卵に火が入っていくその調理過程まで見て取ることができます。
(目玉焼き美味しそう。まだ黄身は半熟状態。手前にあるのは紫玉ねぎ?その隣は唐辛子?何に使うのかしら… ところでこの老婆と少年の関係は?などと、想像しながら見るのも楽しいですよ。ちなみに登場人物の2人、一説では少年はベラスケス本人、老婆はその祖母ではと言われているとか)
第3章 グランド・ツアーの時代 芸術文化の交流と影響
18世紀はパリやロンドンなどの都市で、芸術的才能が大きく開花した時代。
また、英国では裕福な貴族の子弟がその学業の総仕上げにイタリアを訪れることが流行。コレクターたちも、美術品の購入や文化的教養を深めるためにヨーロッパ各国を巡る、グランド・ツアーの時代でもありました。
第3章では、この2つの視点から作品を紹介しています。
フランス・ロココの代表的な画家、フランソワ・ブーシェ、晩年の作品≪田園の情景≫。
3つの絵画からなる作品で、豊かな自然の中で羊飼いや庭師が若い女性に花を贈って誘惑しています。
(ロマンティックな作品、ではありますが、甲斐が注目したのは一番右の作品、女性に抱かれている猫が… 可愛らしい♡)
第4章 19世紀の開拓者たち 革新的な作品
19世紀に入っても、肖像画や風景画などもたくさん描かれていましたが、その中でも革新的な視点で様々な取り組みをした画家たちがいました。伝統的な肖像画を手掛けたスコットランドのレイバーンやグラント、英国の風景画家ターナー、フランスのコローやルノワールらの印象的な作品などが紹介されています。
ランドシーアの≪荒野の地代集金日≫。
川向こうの敵に対して銃を構え様子をうかがう男性、けがをして頭に包帯を巻いて横たわる人物、切迫した状況の中、地代の集金が行われています。
ん?なんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、実はこれ、一つの場面を描いたものではなく、いくつかの史実を一つの画面に盛り込んでいるとか。詳しい解説は図録に掲載されています。興味ある方は是非。
天海祐希さんの音声ガイド グッズも充実
作品を楽しむ助けとなるのが音声ガイド。今回は女優の天海祐希さんがナビゲーターを務めています。
絵画にまつわる物語、描かれているモノの意味などの、作品への理解が深まること間違いなしです。
今回は、画家にもスポットをあてた解説もあります。
絵を見て、解説を聞いて、作品と画家の人となりを理解し、また、絵と向き合う。
解説を聞く前と後では、違ったものが見えてくるかもしれません!音声ガイドお勧めします。
オリジナルグッズは図録に絵はがき、スイーツなど充実のラインナップ。
ご家族やお友達へのお土産にいかがでしょう。
学芸員からのメッセージ 写真撮影のチャンスも!
日本初公開の作品をはじめ、大作も多く見応えたっぷりの展覧会です。
担当学芸員の1人高橋佳苗さんは
「コロナ禍で海外旅行を楽しめない皆さんへ少しでも旅の気分を味わっていただきたいです。メインビジュアルに採用している≪ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち≫など女性の肖像画もたくさんあるので、当時の流行したファッションにも注目していただきたいです。」と話していました。
毎週土曜日には作品の解説を聞くことができる「イブニング・レクチャー」や、会場内を撮影できる「サタデーナイト・フォトアワー」も行われます。
美術史に輝く巨匠たち、「THE GREATS」の競演。是非会場でお楽しみください。
「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」
「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」
会場 神戸市立博物館
住所 神戸市中央区京町24番地
(阪神神戸三宮駅から徒歩約11分)
会期 2022年9月25日(日)まで
休館日 毎週月曜・7月19日(火曜)・9月20日(火曜)[ただし7月18日(月曜・祝日)と9月19日(月曜・祝日)は開館]
開館時間9時30分~17時30分(金曜と土曜は19時30分まで)
※入場は閉館の30分前まで
入場料 一般1800円 大学生900円 高校生以下無料
関連イベント
★イブニング・レクチャー
毎週土曜日17:00~(約30分間)
★サタデー・ナイト・フォトアワ―
毎週土曜日17:30~19:30
特別展 スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち
文/チアフルライター 甲斐千代子
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