沿線お役立ちコラム

コンテナに海上保安庁?面白コラボ弁当が大ヒット!神戸発、駅弁の老舗淡路屋

意外性のあるパッケージがSNSで話題になったJR貨物コンテナ弁当

神戸在住、チアフルライターのやまさんです。JR貨物コンテナ弁当を製造販売、次々とアイデア商品をヒットさせている淡路屋さんは、明治36年に創業、神戸の魚崎に本社を置く駅弁の老舗メーカーです。1998年4月5日の明石海峡大橋開通を記念して発売した、蛸壺形の陶器入り「ひっぱりだこ飯」が大ヒット、淡路屋さんの定番商品となりました。今回は淡路屋「駅弁市場」を訪問、副社長の柳本さんにお話を伺いました。

コンテナで運ばれる駅弁の動画がSNSで拡散

写真:今年1月1日から発売された「JR貨物コンテナ弁当 神戸のすきやき編」1,420円。パッケージもさることながら、お弁当も美味しいと評判です。今後全国各地の特色を活かした第2、第3弾のコンテナ弁当を発売予定だそうです。

 

Q:コンテナのデザインについて、細部まで再現されていると鉄道マニアの間でも評判ですが。

 

柳本副社長:このパッケージを思いついたのは駅で電車待ちをしていたときのことです。貨物列車が目の前を通過していくのをぼんやりと眺めていた時、ふと「コンテナはまだどこもやっていないのでは」と閃きました。国鉄は民営化により7つの会社に分割されましたが、JR貨物のみ、その営業範囲が日本全国。ですから、貨物コンテナは全国の方に認知されており、より多くの方の興味を惹くはず!と考え、発売を決意。すぐにJR貨物さんに連絡しました。JR貨物さんとの打合せは2年におよび、細部の形状までこだわりをもって作り上げました。

モデルとなったのは12フィート5トン積みのJR貨物19D形有蓋コンテナ。19D形は阪神淡路大震災を機に、鉄道輸送障害が起こった時の内航船による代行輸送に即応出来るよう、コンテナ下部四隅に内航船積固定用のツイストロック(緊締装置)式のホール形隅金具と、上部四隅にクレーン吊り作業に対応した簡易式隅金具がついているのを特徴としています。コンテナ弁当の蓋の四隅にも爪がついており、上下にスタックできるようになっています。

 

ロット番号42000番台は2014年から製作されており、JRFレッドの塗装色、側面右上にJRマークと「JR貨物」の文字が入っています。19D形はJRが所有している様々なコンテナタイプの40%を占めています。皆さんも一度はこのコンテナを乗せた貨物列車を見たことがあるのではないでしょうか?

写真:JR鷹取駅に併設されている神戸貨物ターミナル駅。ヤードにはコンテナ弁当のデザインに採用されたJR貨物19D形12フィートコンテナが積まれています。

 

Q:ツイッターで製造ラインを流れるコンテナ弁当の動画が多くの人に注目されましたね。

 

柳本:生産初日、弁当製造の現場を見に行ったら、たまたまこの様子が目に飛び込んできたんです。ラインの先頭に山積みになった容器がひとつひとつラインに乗って運ばれ、中身が詰め込まれていく様子が、あたかも巨大なヤードから出庫するコンテナ貨物車そっくりで。夢中で動画に納めました。


柳本:それにしても、SNSの波及効果は大きいですね。2月下旬からリラックマ弁当やトワイライトエクスプレス弁当など、過去に販売していた商品の再販をはじめたのですが、こちらの予想に反しての大反響。情報の伝達速度や範囲が飛躍的に向上していることに驚きました。

 

柳本:コンテナ弁当は1月中にほぼ売り切れてしまったので急遽増産しました。1月1日の発売日以来ずっと好評をいただいています。鉄道マニアだけでなく、女性からも可愛いパッケージだと人気です。

 

 

海上保安庁と駅弁がコラボ!? 「海のもしもは118番ひっぱりだこ飯」

写真:35m型巡視艇「PC18はるなみ」とのツーショット。

【はるなみ】

就役:1996年3月28日

船型:はやなみ型

特徴:航路の哨戒のため25ノットでの高速運転、長時間連続低負荷運転に対応。航行不能船の曳航が可能なように使用荷重5トンの曳航用ビットを装備。

 

Q:海上保安庁第五管区とのコラボはどういった経緯で実現したのでしょうか?

 

柳本:以前、弊店を取材していただいた記者の方が、たまたま海上保安庁第五管区の担当だったんです。以前、第五管区さんが551の蓬莱さんとコラボしていましたので、うちもコラボしたいと話していたところ、その話が伝わり、先方からもぜひお願いしますということで実現しました。


柳本:118番は海難事故や海上で起きた事件を通報する番号なのですが、海保では118番にかかってくる電話のほとんどが間違い電話。知名度のある企業や商品とのコラボを通じて、「118番」の認知度を上げていきたいと考えているそうです。今回の118弁当はお陰様で完売しました。現在第2弾の計画を立てているところです。

 

Q:今後神戸港と関わりのある、海技教育機構、神戸海洋博物館、フェリー・観光船会社とのコラボ予定はありますか?

 

柳本:2012年にNHKの大河ドラマで「平清盛」を放送していた頃に「みなと弁当」を販売したことがあります。海にちなんだお弁当では日本財団とコラボした「海と日本PROJECT版ひっぱりだこ飯」もありますし、機会があれば是非やってみたいです。

写真:1月14日発売の『海の「もしも」は118番 明石名物ひっぱりだこ飯』 1,180円。118番弁当には通常のひっぱりだこ飯の食材に加えてイカが入っています。実は第五管区ではイカがよく漁れるのだそう。ひっぱりだこ飯の器は電子レンジでの使用が可能です。500Wで2分半~3分温めてくださいね。

海保の制帽をかぶったひっぱりだこの包み紙。バーコードの末尾3桁まで118です。

器の底も要チェックです。

第一突堤近くの船溜りには海上保安庁の巡視艇がたくさん泊まっています。

これは20m型巡視艇CL141しらぎく

左からはるなみ、35m型巡視艇PC55ふどう、23m型灯台見回り船LM208こううん。暖かくなったら第一突堤やメリケンパークで淡路屋さんのお弁当を広げるのもいいですね。

名前を変えただけで売上が増えた「六甲山縦走弁当」

写真:「六甲山縦走弁当」680円。淡路屋のお弁当は冷めていても美味しく食べられるように工夫されています。山歩き用にと味付けが濃いめで、白米むすびが特に美味。神戸を縦断するように海の幸山の幸がバランスよく詰め込まれています。携帯しやすいサイズ感、小さくまとめて捨てられる紙箱入りです。個人的にすごく好きなお弁当です。

Q:このお弁当が誕生した経緯について教えてください。

 

柳本:元々このお弁当は「ハイキング弁当」として売り出したんですが、売り上げは今ひとつでした。それで、これはタイトルが良くないのだろうと神戸の六甲山にちなんだ「六甲山縦走弁当」に変更したところ、神戸近郊の山へハイキングに行くお客さんによく売れるようになりました。

 

「六甲山縦走弁当」ってちょっと変わったネーミングですよね。やまさんはこのネーミングにものすごく惹かれてこのお弁当を購入しました。神戸市では毎年11月に「KOBE六甲全山縦走大会」という登山大会が開催されています。山陽電鉄須磨浦公園駅をスタートし、一昼夜近くをかけて摩耶山、六甲山を抜け阪急宝塚駅をゴールとする、かなりハードな大会です。神戸市主催により1975年から始まったもので、毎回全国から約4,000人もの登山愛好家が参加するそうです。

新しい発想のお弁当作りは淡路屋の伝統芸

写真:淡路屋提供

2019年1月に発売された「ゴジラ対ひっぱりだこ飯」。ゴジラに焼かれた焼きだこ入りです。

 

Q:「ゴジラ対ひっぱりだこ飯」はとても変わってると思うんですが、どういう経緯で商品化したのでしょう?

 

柳本:ゴジラのフィギュアを眺めていて、ふと、ゴジラとうちの名物であるひっぱりだこ飯が戦ったら面白いだろうなと思ったんです。すぐに「ゴジラ対ひっぱりだこ飯」の企画書を作成。版権元である東宝さんに持ち込んだところ、「神戸や明石でゴジラが撮影されたことはないし、特撮世界における悪の象徴「タコ」(※)と戦ったこともない」と面白がってもらい、コラボが実現しました。

 

Q:ハローキティ版ひっぱりだこ飯、リラックマだららん釜めし、令和の嗜み弁当など、ユニークな企画をされていますが、いつ頃からこのようにキャッチーなお弁当を作るようになったのでしょうか?

 

柳本:これは最近はじまったものではなく、弊店は、昔から新しい発想で商品開発をする社風なんです。幕の内が主流であった頃、地域らしい特色ある駅弁を!として当時斬新だった牛肉弁当「肉めし」を生み出したり、いつでもどこでも紐を引けば温まる「あっちっちスチーム弁当」を開発したり、神戸ワインのボトルをそのまま弁当にいれた日本初のワインボトル付き駅弁「神戸ワイン弁当」を売り出したり…と他社がやらないことをやり続けてきました。駅弁は旅の思い出の一部になる存在ですから、お客様に驚きをあたえ、満足いただくものでなければならないと考えています。その観点から、キャラクターコラボや時勢に合った商品を、他社に先駆けて発売しつづけています。

 

Q:お弁当の企画はどういうふうに進めていますか?

柳本:基本的には、社長と私が企画のまとめ役をやっていますが、社員誰もが自由にアイデアを出せる環境です。ユニークなアイデアが出れば、社員同士が自ずと意見を出し合って、自然と企画が磨かれていき、完成度が高まります。ですから、次々に面白い商品を作り出すことができていると思います。ちなみに、コンテナ弁当は少しマニアックだったので、私がほとんどやりました(笑)。

 

Q:企画する上で何か意識していることはありますか?

 

柳本:「わたしたち自身が全力で楽しむ、悩んだらその企画はやめる」です。自分達が楽しんで企画したお弁当には企画した時の楽しい空気が宿り、逆にああでもないこうでもないと悩んで作ったお弁当にはその時の苦しい気分が宿ってしまうと思うからです。

 

Q:柳本さん自身が企画をしていて苦労することはありますか?

 

柳本:色々と制限がある中で企画するとなると辛いこともあると思いますが、今は自由にやらせてもらっているので苦しいということは特にないです。服装に関しても社長はスーツを着ていますが、私は比較的ラフな服装で仕事をしています。淡路屋では若い世代の社員に新しい考え方で働いてもらいたいと思っていますので、率先垂範といいますか、私自身が新しい働き方のモデルになっていけたらと思っています。

 

※東宝の特撮作品「キングコング対ゴジラ」「フランケンシュタイン対地底怪獣」「ウルトラQ」などに海魔、怪魔と呼ばれる大ダコが登場しています。

淡路屋はあくまで中味で勝負

写真:ひっぱりだこ飯の器と蓋

 

Q:淡路屋のお弁当は器も魅力的でとても人気があります。器を再利用してご飯を炊いたり、プリンや茶碗蒸しの容器として使う人がいるようですが、器の強度を上げたり壺のバリエーションを増やしたりといったことは考えていますか?

 

柳本:全く考えていません。弊店商品の器は、あくまでも旅行気分を一層盛り上げ、より美味しくお弁当を楽しんでいただくために工夫を凝らしたものです。多くのお客さんが当社の容器を気に入っていただき、関西以遠の方からも「器だけ売ってほしい」と言われるのですが、弊店はあくまでも中身で勝負していますので、器を単独で売ることはありません。コンテナ弁当も、中身が美味しかったとの声を多く頂戴しており、本当に嬉しく感じております。

「甲子園号」や「タイガース号」のお弁当は誕生するのか?

2020年6月に発売された阪神タイガース公認の「虎のベストナイン弁当」

 

Q:現在、鉄道では主にJRとのコラボをなさっていますが、今後阪神電鉄とのコラボは考えていますか?

 

柳本:弊店では鉄道ファンの拡大を目的に、私鉄とのコラボにも力を入れています。私鉄では近鉄(近畿日本鉄道)とのコラボで、しまかぜ弁当や名阪特急ひのとり弁当を販売しています。また、2020年にはすみっコぐらし×京急×淡路屋のコラボで特別なひっぱりだこ飯を発売しました。阪神さんとのコラボでは、コロナ禍の中でもプロ野球観戦を自宅で楽しんでいただこうと、阪神タイガース公認弁当を発売しました。阪神電鉄とのコラボも前向きに考えていきたいと思っています。

2022年8月から発売されている「名阪特急ひのとり弁当」1,080円。近畿日本鉄道とのコラボです。阪神電鉄の車両「タイガース号」や「甲子園号」をデザインしたお弁当もあったらいいですよね。

 

 

オリジナルグッズも豊富な「駅弁市場」

写真:美味しそう!と思ったらなんとTシャツ。種類も豊富です。

 

淡路屋「駅弁市場」では、他店と違い淡路屋のオリジナルグッズを数多く取り扱っています。今は在庫切れですが、人気のひっぱりだこ飯の蓋やコーヒーカップもありました。

他店ではなかなか見かけない付箋や飴、カプセルトイなど、淡路屋のオリジナルグッズが売られています。

オリジナルカプセルフィギュア「LuckyDrop」から発売されている「駅弁フィギュアコレクション」。ご当地の人気駅弁6種類が入っています。この中にひっぱりだこ飯のフィギュアもあるのですが、今回は北海道の石狩鮭めしが当たりました。細部まで凝った作りです。駅弁フィギュアコレクションはJR東日本主要駅のカプセル自販機やコンビニを中心に販売されているそうなので、駅弁市場以外でゲットするのはかなり難しそうです。

縁を大切にする企業、淡路屋さん

2月26日〜3月5日限定発売の「3月3日は桃の節句 ひなまつりひっぱりだこ飯」1,200円と「明石名物だし巻き穴子めし」1,050円

 

現在淡路屋初の副社長に就任されている柳本さんですが、就職のきっかけは会社が当時住んでいた家の近所にあったから。大学卒業以来ずっと淡路屋さんに勤めているそうです。淡路屋さんと柳本さんとの強い縁を感じるとても素敵なお話だと思いました。

 

実はやまさんの知り合いに淡路屋さんの本社工場で働いている方がいます。その人の話によると、コロナでお弁当の生産量が落ちて多くのパートさんを休職させなくてはいけなくなった時、工場からはちゃんと休業補償が出て、製造ラインが再開したら是非また来てほしいと言われたのだそう。休業扱いになった人たちは補償を受けながら別のアルバイトをして休業期間を凌ぎ、ラインを再開した時にはコロナ前に働いていたパートさんのほとんどが戻って来たそうです。

 

阪神間の海岸線沿いにはたくさんの工場があり、数多くのパートさんや派遣社員が働いていますが、コロナ禍で多くの人が何の保証もないまま雇い止めに遭いました。特に食品工場で働く人の中には転職の難しい高齢者の方がたくさんいます。企業自体が大幅な売上減に苦しむ中で淡路屋さんの取った対応は本当に真摯なものだと思います。柳本さんによると、淡路屋は従業員同士の仲がとても良いのだそうです。このエピソードを聞いたやまさん、人の縁を大切にする企業なんだなあと、とても嬉しくなりました。

 

沈静化してきたとはいえ、まだまだコロナの影響が続いていますが、阪神間の企業がこうした形で全国的な知名度を上げて雇用を守ってくれているのは心強いです。これからも淡路屋さんの面白い発想の美味しいお弁当に期待しています。

 

 

【淡路屋「駅弁市場」】

住所:神戸市中央区布引町4-1-1 JR三ノ宮駅改札区画フラワーロード沿い 

 

電話:080-6023-8452

営業時間:9:00〜19:00

定休日:年中無休

お弁当予約:可

※ 3月末までの営業予定でしたが、しばらく延長することになりました。

淡路屋Twitter 新作商品・再販商品の情報はここでゲット

淡路屋HP

 

【参考】

JR貨物鉄道株式会社HP

海の事故発生!118番が「あるとき~!」551蓬莱、第五管区海上保安本部とコラボ そろそろ覚えて『海のもしもは118番』 ラジトピ

9/29(火)より、ラッキードロップ「駅弁フィギュアコレクション第2弾」発売! JR-Cross

 

文/チアフルライター やまさん

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