ラインの館に乗り物のイラスト大集合
神戸在住、レトロ好きのチアフルライターやまさんです。今回は神戸北野異人館で開催中の、乗り物イラストレーター井上広大さんによる個展「TRAIN&BUS Gallery」へ行ってきました。会場となるラインの館には阪神電車をはじめ神戸市内を走る電車やバス、ケーブルカーのイラストが大集合しました。
シティー・ループバスで神戸異人館へ出発
駅から歩いても行けますが、異人館へ行くならやはり「走る異人館」シティー・ループバスでしょう。レトロな車体が異人館の街並みとよく合っていますよね!シティー・ループバスは、布引ハーブ園ロープウェイ乗り場からメリケンパークまで、南北に長い三宮の主要スポットを全て押さえてあるので、1日乗車券を使えば効率よく神戸市内観光ができます。また、1日乗車券を提示すると、異人館やその他観光施設の入館料が割引になります。神戸三宮駅からだと、「三宮センター街東口」か「地下鉄三宮駅前(北行)」で乗車し「北野異人館」で下車するのが便利です。
車内もレトロでお洒落です。車内には行き先の観光案内が流れており、興味深い神戸トリビアを聞くことができます。
ラインの館はバス停「北野異人館」で下車した目の前にあります。入り口の前に井上さんの個展の掲示がありますよ。
井上広大個展「TRAIN&BUS Gallery」を拝見
写真:乗り物イラストレーター井上広大さん
乗り物イラストレーターとして活躍している井上広大さんは、明石市で生まれ育ちました。小さい頃に祖父と線路沿いの道路をよく散歩したこと、通っていた小学校のそばに車両基地(JR西日本の網干総合車両所明石支所)があったことから、物心がつく頃には既に鉄道好きの子供だったそうです。中でも特に親しんだのは阪神神戸三宮へも乗り入れている山陽電車。
大阪芸大を卒業後、現在は神戸で働きつつイラストレーターとして精力的に制作活動をされています。公募や鉄道仲間との交流を通して仕事の幅が広がり、時に鉄道会社から直接仕事のオファーが舞い込むこともあるそうです。
現在、交通新聞社から塗り絵絵本「自分で色づけ!図鑑『でんしゃ』」や「鉄道花札(てつふだ)」の出版、書籍の表紙や扉絵、Tシャツ、缶バッジ、トートバッグなどのグッズ販売を手掛けています。
オフの日には「乗り鉄」として全国の私鉄路線巡りをしているそうです。
今回の個展のテーマとなる「神戸を走る鉄道」。阪神電鉄、JR、阪急電鉄、山陽電鉄、神戸電鉄の私鉄車両のほか、神戸市営の地下鉄、ライナー、ケーブルカーといった多種多様な車両が走っていることがわかります。
井上さんの作風はミリペンによる線画とCGを組み合わせた、親しみやすく明るくポップなイラスト。
鉄道花札(てつふだ)
JRの鉄道をテーマにした花札。鉄道の図柄を組み合わせた花札はとても珍しく、大変人気があるそうです。出版元である交通新聞社HP、宝塚市文化芸術センター、書店、アマゾンなどで販売中。
これは、北神急行電鉄からの製作依頼を受け、トミーテックより発売されている鉄道車両の展示用模型「鉄道コレクション」北神急行7000系の発売記念のために制作されたヘッドマークのレプリカ。
写真提供:井上広大さん
本物のヘッドマークは2018年の8月〜9月の間車両に掲出されました。本物をご覧になった方もいるかもしれませんね。
これはカワチ画材店が販売している組み立て式のキャンバス(商品名:ペーパー3Dキャンバス)に描かれた「電車・バスの顔」。神戸市内を走る電車やバス、ケーブルカーの顔が細部まで細かく描かれており、見ていて楽しくなります。
やまさんが乗ってきたシティー・ループの顔もちゃんとありました。側面も凝っています。
井上さんが在廊する1月16日(日)、23日(日)の13:00〜16:00(予定)には鉄道模型の運転も。
日にちが合うなら在廊日に行くのが狙い目です。「鉄道コレクション」北神急行7000系の模型が走っているところを見せてもらえるかも。
1階の売店では缶バッジやポストカードなど、井上さん制作のオリジナルグッズを販売。
井上さんの次の出品予定は、1月19日〜25日に姫路市の山陽百貨店で開催される第9回郷土作家展。神戸市電の絵画を多く手掛けている松本ゆうじ氏やグラフィックデザイン界の大御所である永井一正氏など、多彩な作家が勢揃いするそうなので、興味を持たれた方はぜひ行ってみてくださいね。
ラインの館の館長さんにお話を伺いました
写真:ボタンを押すと約5分間で異人館街の歴史の概略を効率良く理解することができます。プロジェクターの下の台が地図になっていて、どの地点の解説をしているかとても分かりやすいです。
ラインの館館長の松阪さんにもお話を伺うことができました。飛び込み取材だったにも関わらず、快く応じていただきました。
神戸北野異人館街の誕生は、1868年に神戸港が開港しそれまで長閑な半農半漁村であった神戸村に外国人が居住するための居留地が開発された頃にまで遡ります。居留地の整備が遅れたことにより、新たに外国人が居住できる場所として鯉川(現・鯉川筋)と生田川(現・フラワーロード)で挟まれた地域が明治政府により「雑居地」として指定されました。彼らは北野天満宮に近い北野町に次々と洋館を建て、異人館街を形成していきました。
今年で107歳を迎えるラインの館。建築主はフランス生まれのJ.R.ドレウェル夫人。1871(明治4)年に来日し1915年(大正4)、58歳のとき現在の場所に自宅としてこの館を建築、1920年(大正9)に亡くなるまで暮らしました。 その後館は別のドイツ人の手に渡った後、1978(昭和53)年に神戸市が購入し地区内の案内センターとして整備されました。 その際に市民から愛称を募集し、壁面の下見板の美しい直線にちなんで「ラインの館」と名づけられました。
ラインの館は大正初期の建築ですが、木造2階建下見板張りオイルペンキ塗りで、開放されたベランダ、ベイ・ウィンドー、軒蛇腹、よろい戸など、明治時代のいわゆる異人館の様式をそのまま受け継いでいます。1995年の 阪神淡路大震災では、煙突の落下や内部の壁のひび割れなどの被害を受けたため、修復工事を行ないました。 2016年4月より再度全面解体による修理と耐震対策・防火対策などを施し、2019年4月にリニューアルオープンしました。
これは2階ベランダ。元々は開放型のものでしたが、日本の寒い気候に合わせて窓が取り付けられ、サンルームのような構造になりました。床が僅かに左へ向かって傾斜しています。これはベランダに雨が吹き込んだ時に水はけを良くするためだったそう。右側の壁に水平に何枚も貼られている板がラインの館の最大の特徴である「下見板」です。
ラインの館の1階と2階を貫く暖炉。レンガで柱状に組まれており、先が屋根を突き抜けて煙突になっています。この暖炉の燃料にはにコークスが使用されました。コークスは煙が少なく薪に比べて熱効率が良いため、薪を使用する暖炉に比べサイズが小さいそうです。
ラインの館の庭園にはオリーブの木の鉢植えが。異人館街のある神戸市中央区山本通は日本で初めてオリーブの栽培試験が行われた場所です。オリーブの苗木は1878年にフランスのパリで開かれた万国博覧会で展示されていたものを幕府の万博使節団員が買い求めたもので、この苗木を元に1879(明治12)年から1888(明治21)年までオリーブが栽培され、搾油にも成功しました。
現在北野異人館として公開されている館は約20軒。その中でもラインの館のみ、異人館のガイド役として無料見学が可能となっています。北野異人館では定期的に館の説明会やガイドツアーを実施しており、毎年10月3日は「KOBE観光の日」として異人館などの観光施設が無料開放されています。詳しくは神戸北野異人館HPをチェックしてみてくださいね。
D51まつりが繋げた井上広大さんのイラスト
やまさんが井上広大さんを知ったのは、昨年の12月5日に西元町で開催された「D51まつり」で配られていたこのチラシのお陰です。「D51まつり」については「S Lの保存活動で繋げる地域コミュニティ【デゴイチカフェ】@西元町」という記事でご紹介しています。ここに描かれている阪神の8000系のイラスト、阪神の車両独自のポップで明るい色使いとよくマッチしていて素敵だと思いませんか?「D51まつり」のポスターも手掛けています。その理由は、「神戸・西元町のデゴイチを守る会」の代表である飯野さんが鉄道仲間だった井上さんに声をかけたからだそうです。鉄道が繋げたお二人の縁。ならばやまさんとしては、井上さんがもっとたくさん阪神電車を描いて、さらに縁を繋いでくれたらいいのになあと思ったりしています。
【情報】
乗り物イラストレータ― 井上広大個展 ~TRAIN&BUS Gallery~
開催期間:2021年12月29日〜2022年1月23日まで(期間中毎日実施)
開催時間:9:00〜18:00(最終入館17:45)
電話:078-222-3403
入館料:無料
アクセス:阪神・JR・阪急・地下鉄三宮駅下車 北へ徒歩15分。
シティー・ループにて「北野異人館」下車徒歩5分。
神戸市中央区北野町2丁目10-24
乗車賃:大人260円 小学生以下130円
1日乗車券:大人680円 小学生以下340円
1日乗車券販売所:シティー・ループ車内、神戸市総合インフォメーションセンター、新神戸観光案内所
文/チアフルライター やまさん