お腹、お元気ですか?
新型コロナウイルスに翻弄された2020年度も終わりに近づいてきました。この時期は年度末や年度初め、その後の決算を控えてさらに忙しくなる日々が待ち構えている方も多いと思います。気がつけば夜も更け、食事をするお店も閉まってしまい、「時間的に胃に重たいものを食べるのは避けたいけれど、食事を抜くのもどうか・・・」と悩むこともあるのではないでしょうか?
スーパーが閉まってしまうと、コンビニエンスストアに頼りがちになることもあると思いますが、最近はコンビニもバランスの良いお弁当やお惣菜を色々と出していて、便利になってきました。とはいえ、お腹に負担がかかりやすいこの時期、なるべく消化の良いものを食べた方が良いですよね。それでは、そもそも「消化に良い」ってどういうことなのでしょうか?
そもそも消化とは?“飲み込む”=“消化”ではない!
皆さんは、消化や吸収にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
多くの方は「噛むこと=食べ物を潰すこと」として考えられていると思いますが、噛むと同時にあごが動かされ、唾液腺が刺激されることで唾液が出てきます。そして、潰された食べ物と唾液中のアミラーゼが混ざることで、三大栄養素の中でも主に「炭水化物」の消化が始まるのです。
消化が始まった食べ物は、口から咽頭・喉頭・食道を通り抜けて胃に到達します。そこで、胃酸・ペプシンが、タンパク質を吸収される一歩手前の形(ペプチド)に変身させます。
恐らく皆さんがご存じなのは、この胃に到達するところまでと思いますが、実は、さらに胃を通り抜けて十二指腸へ行くと、すい臓から出てくるトリプシン・キモトリプシン・カルボキシペプチターゼ・膵アミラーゼ・膵リパーゼなどが、それまでに分解されてきた炭水化物由来のマルトースやタンパク質由来のペプチド、脂肪などをさらに細かく分解して小腸に送り込みます。そして、最後に、小腸の粘膜上皮にあるアミノペプチターゼ・ジペプチターゼ・マルターゼ・ラクターゼ・スクラーゼでさらに細かく分解され、やっと吸収されるのです。こうして吸収された栄養は血液に入って門脈を通り肝臓に到達し、エネルギーになったり、組み替えらたりしてまた人の身体になります。
消化の良い物とは?
炭水化物・タンパク質・脂質の三大栄養素で見れば、口の唾液に炭水化物の消化酵素があって最初に消化がはじまり、続いて胃酸のペプシン・タンパク質の消化酵素、最後に脂質の消化酵素が働きます。つまり、「人間の消化酵素で消化されるのが早い=負担が少ない」と考えるのであれば、炭水化物、タンパク質、脂質の順に消化が良いと言えます。
ただし、すべてこのとおりという訳ではありません。炭水化物には糖質と食物繊維が含まれており、食物繊維は人の消化酵素で分解できないため、消化が遅くなります。“腹持ちが良い”とは消化が遅い、または消化が難しいものを指しますが、考え方としては、「白米のように繊維が少ないもの=消化が早い」「玄米のように繊維が多いもの=腹持ちが良い=消化は遅い」と考えて下さい。また、タンパク質においては肉や魚を焼くと脂が落ちてくることがあります。油脂の消化酵素は後から働くので「油脂が少ない=消化が早い」「油脂が多い=消化は遅い」ということです。
消化が遅いのは悪いことではありません。腹持ちが良いことで食べ過ぎをなくすほか、エネルギーを確保できることも利点になります。ただし、その利用する時間帯によっては胃腸の負担になります。簡単に言えば、昼食や夕食でも就寝までに3時間程度の時間があれば良いかもしれませんが、「遅くに帰ってきて食べてすぐ寝る」という場合は消化の途中で脳が休まり、胃腸の運動も低下するので、食べ物が胃腸に滞留して負担になってしまいます。その際は、「消化の遅いものより早いものの方が消化に良い」と考えた方が良いでしょう。
食べ物には利点と欠点があります。食べる時間帯・体調によって利点・欠点を見極めながら、極端に偏らずに色々と食べるようにするのがベストです。
<今回のレシピ>おにぎりdeリゾット風3種
A 鮭おにぎり1個、調整豆乳(牛乳でも可)
千切りキャベツ・冷凍ほうれん草
(今回はベーコンとコーンが入っていますが、
夜食ならほうれん草のみがよいです)
B ツナマヨおにぎり1個、野菜ジュース
(トマトジュースでも可)
千切りキャベツ・冷凍ブロッコリー
C 白飯おにぎり1個、サラダチキン、
無調整豆乳(牛乳でも可)、
インスタント味噌汁の味噌半分、
千切りキャベツ多め
<作り方>
材料を茶碗にそれぞれ入れて、レンジでスープがぐつぐつ煮立ったら完成です。
一度レンジから取り出しよく混ぜ合わせた後、少しムラしておくと、さらにリゾット感が増します。
下段左:A 鮭+調整豆乳
下段右:B ツナ+野菜ジュース
上段 :C サラダチキン+無調整豆乳+味噌
いずれもおにぎりや具材自身に味があるので、こしょうを足すぐらいで味の調節をしましょう。
調整豆乳は少し甘味があるのでホワイトソース風になります。無調整豆乳はそのままだと大豆感が強いので、同じ仲間の味噌を入れると風味がよくなり、さらに少しマーガリンを足すと、うま味が上がります。野菜ジュースはバジルを足すと、トマトベースの味に更に美味しさがUPします。
昼食でボリュームアップしたい時は、チーズやきのこなど好きな具材を足してみてください。ただし、前述したように油脂の多い物や、不溶性繊維(海藻・きのこ・こんにゃくなど)は胃腸に滞留しやすいので、出来れば寝る前などは避けた方が安全です。
おにぎりの海苔は、お好みで細かく切って入れるのも良いでしょう。
コンソメやポタージュなどをベースにする際は塩分が増えますので、具材で調整しましょう。
参考:病気がみえる ①消化器 第5版