沿線お役立ちコラム

「開館50周年 今こそ GUTAI 県美の具体コレクション」@兵庫県立美術館

抽象画なのに「具体」その心は! 「具体美術協会」のモットー

左 吉原治良 『黒地に赤い円』 1965 アクリル・布

右 元永定正 『作品(赤・黒)』 1970 アクリル

 

こんにちは!美術館・博物館担当チアフルライター甲斐千代子です。

 

戦後の日本美術を語る上で欠かせない「具体美術協会」の作品を紹介する「開館50周年 今こそGUTAI  県美(ケンビ)の具体コレクション」が兵庫県立美術館で開催されています。

 

GUTAI・「具体」と略される「具体美術協会」は、戦前から前衛画家として活躍していた吉原治良をリーダーに阪神間の若手作家が集まり1954年、芦屋市で結成されました。

 

合言葉は「人の真似をするな」

 

グループ名「具体」は「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示したい」という思いをあらわしています。屋外や舞台を使って作品発表を行うなど、それまでの芸術の枠のとらわれない自由で奇想天外な発想から生まれる作品は、当時、日本国内よりも海外で注目を集めます。1972年吉原治良が亡くなるとグループは解散しますが、その後も海外で数多くの回顧展が開かれてきました。

今こそ、今だからこそ郷土作家のグループ「具体」 に注目!

今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、同館でも、展覧会の中止や延期が続きました。

「それでも芸術を楽しんでほしい」

しかも、今年は、前身の兵庫県立近代美術館から数えて50周年の節目の年、記念の展覧会を開催したい。

「美術館を身近に感じてほしい」

学芸員たちの思いは募ります。

 

海外からの作品の行き来は難しいことから、展示するのは同館のコレクションのみ。50周年記念ということで、やはり「地元」を大切にしたい。

様々な制約がある中でピックアップされたのが「具体美術協会」=「具体」の作品でした。

 

「具体」は阪神間の若手グループが芦屋で結成した。その作品を集めた「具体コレクション」は開館当初から力を入れてきたもので、県美が誇るコレクションの柱の一つである。その中にはまだお披露目できていない作品がある。地元の皆さんに、地元出身の画家のグループの作品の魅力に再注目してほしい。

(そして、担当学芸員さんが学生時代に初めて目にしたとき、『すっごい!』と衝撃を受けたのが「具体」の作品だった)

 

様々な要素が集まって、今こそ、今だからこそ見てほしい展覧会「今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」が実現したのです。

人の真似をするな!自分の道を拓け!

左 元永定正 『作品N.Y.№1』1967 アクリル・布

中 白髪一雄 『色絵』1966 油彩・布

右 白髪一雄 『黄帝』1963 油彩・布

 

会場内には、吉原治良や白髪一雄、山崎つる子など31人、72点の作品が並びます。

 

白髪一雄は足を使って描く「フット・ペインティング」を追求しました。

(絵の具の厚み、躍動感に注目してみてください)

 

元永定正は抽象画で描く前例のない絵本作りを志します。初期は、キャンバスに絵の具を流し込む画法を、のちにアクリル絵の具とエアブラシを使い丸みのあるユニークな作品を描きました。

(遠くから見て形の可愛さを、近くで見て、きらめきを確認してみてください)

 

彼らの自由な作品を見ていると、自然と肩の力が抜けて、心が軽くなっていくような気がします。

ポップで明るい作品も! あれ、謎のスイッチが…

右 山崎つる子 『赤』 1956/1985 木・ビニール

田中敦子 『作品《ベル》』 1955/1985

 

天井からぶら下がる、赤く四角い物体。かがんで中を覗き込みたくなる衝動にかられます。山崎つる子の作品《赤》は1956年の野外具体美術展で展示されたもので観客が中に入って楽しめる作品です。が、今回は「密」を避けるという理由などから「中に入らないでくださいね」とのことです。

(よろしくお願いいたします)

 

色とりどりに点滅する電球を身にまとった作品《電気服》で知られる田中敦子。色鮮やかな円と電気コードを連想させる線が絡み合う作品は、様々なバリエーションがあります。今回の展覧会では、兵庫県立美術館移転後、初お披露目の作品もあります。が、注目してほしいのはこちらのスイッチ。キャプションにも書かれています。遠慮せず、思いっきって、さあ!押してみてください!!

 

女性作家が少なかった当時、GUTAIでは多くの作家が男女わけへだてなく活躍していました。

キャプションにも注目! 鑑賞ガイドも参考に

抽象画は難しい、という声をよく耳にします。確かに、これって何?どう解釈すればいいのかしら?と思うことがあるかもしれません。

作家の人となりや作品に込めた思い、制作手法などを知ることが作品理解の一助になると思います。

今回の展覧会、キャプションが充実しています。「おとなとこどもの鑑賞ガイド」というリーフレットも用意されています。是非参考に!

 

担当の鈴木学芸員は「会場の前半では、1点1点の作品と、じっくり向き合っていただき、後半は、その観察の結果を活かしながら、多くの作品をご覧いただければと思います。

(かなり、緩急のある構成になっています)

具体のことをよくご存じの方も、これまでスルーしてきたという方も、ぜひこの機会にご覧くだされば幸いです」と話していました。

 

コロナ対策もしっかりとしつつ、ぜひ会場へ!

「開館50周年今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」来年2/7まで

会場風景

 

「開館50周年 今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」

会場 兵庫県立美術館

会期 2020年12月5日(土)〜2021年2月7日(日)

時間 10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)

休館日 月曜日(ただし、1月11日(月)は開館、1月12日(火)は休館)

年末年始 12月28日(月)〜1月4日(月)

観覧料   予約優先制です。

詳しくは公式サイトをご覧ください。

一般 1,300円

大学生 900円

高校生以下 無料

70歳以上 650円

障がいのある方 (一般)300円、(大学生) 200円

https://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_2012/

 

文/チアフルライター 甲斐千代子

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