コロナ禍での展覧会 関係者の努力で、会期を秋にずらして国立国際美術館で開催中
こんにちは!美術館・博物館担当、チアフルライターの甲斐千代子です。
星のソムリエ®(星空案内人)でもあります。
ロンドン中心部、トラファルガー広場に面して建つ美の殿堂、ロンドン・ナショナル・ギャラリー。
1924年、当時の上流階級の市民や美術コレクターらが「市民のための美術館を作ろう」と作品を寄贈して設立されました。所蔵作品は13世紀後半から20世紀初頭までの名品約2300点。決して多くはありませんが、吟味に吟味を重ねて選び抜かれた作品ばかりです。
海外の美術館のコレクションを日本で公開する場合、通常は所蔵館の学芸員など関係者が来日し、詳細な打ち合わせ、展示作業の立ち合いなどが行われます。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今回、それは叶いませんでした。そんな中で、作品たちは日本にやってきました。関係者の努力によって、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は開催にこぎつけたのです。
イタリア・ルネサンスからポスト印象派まで
≪劇場にて(初めてのおでかけ)≫
ピエール=オーギュスト・ルノワール
1876‐77年 油彩・カンヴァス
作品は61点。ゴッホ・レンブラント・フェルメールにモネ、名だたる巨匠の作品が並びます。
これだけの数の作品が、一度にまとめて海外に持ち出されるのは、ナショナル・ギャラリーの200年の歴史の中で初めてのこと!貴重な展覧会なんです。
「イギリスで築かれた西洋美術のコレクション」をコンセプトに、イギリスとヨーロッパ大陸の交流という視点で、イタリア・ルネサンスから19世紀のポスト印象派まで、西洋美術の流れを感じることができます。
やはり注目はゴッホの≪ひまわり≫
≪ひまわり≫
フィンセント・ファン・ゴッホ
1888年 油彩・カンヴァス
ゴッホはその生涯で7枚の≪ひまわり≫を描きました。これは4枚目の作品。友人であるゴーギャンの評価も高かったそうです。
会場にはたくさんのキャプションが設置されています。詳細はそちらをご覧ください。
ただ、この作品を見ていると時がたつのを忘れてしまいそうです。鮮やかな黄色が目に眩しすぎます。心が震えます。要注意です。そして、後ほどご紹介する単眼鏡でこの作品を見ると… 圧巻です。
お星さま担当からのおすすめ作品
≪天の川の起源≫
ヤコポ・ティントレット(本名 ヤコポ・ロブスティ)
1757年頃 油彩・カンヴァス
お星さま担当としては外せないのがこちら≪天の川の起源≫
ナショナル・ギャラリー設立当初のコレクションに含まれる作品で、当時のパトロンや収集家はこういった歴史画というジャンルを重視していたそうです。
「神々の王であるユピテルが息子であるヘラクレスに永遠の命を与えようと企てた物語。
女神ユノの母乳を飲ませ、ヘラクレスを神にしようとしたユピテル。ユノが眠っているスキを狙います。
しかし、ヘラクレスが力強く乳を吸うためユノは目を覚まし、引き離そうとします。その際ユノの母乳が空へと吹き出し、ミルキーウェイ・天の川が誕生しました」
歴史画には大きなメッセージが込められています。メッセージを理解するには知識が必要です。
作品を描く画家も、鑑賞する側にも知性と品格が必要となります。歴史画がジャンルとして重視されていた理由はここにあります。
単眼鏡を覗き込んで…
≪ヴェネツィア:大運河のレガッタ≫
カナレット(本名 ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)
1735年頃 油彩・カンヴァス
単眼鏡で見ると…
18世紀、イギリスの裕福な貴族の子弟がその学業の総仕上げにイタリアを訪れることが流行しました。グランドツアーです。彼らはお土産として、名所や旧跡、カーニバルの様子などを描いた絵画を持ち帰りました。(わたしなら絵葉書… かな)
ヴェネツィアの大運河で行われるレガッタレースの様子。運河の両端に立ち並んだ宮殿からは色鮮やかな旗がたらされ、窓から身を乗り出す人、船に乗り込むひとなどで大賑わいです。
この作品、大きく全体を眺めるのもいいのですが、アップにすると!…… わあ!細かい!
人の顔、身に着ける衣装も詳細に描かれているのがわかります。さらに筆の流れ、絵の具の凹凸なども見て取れます。、作品の中に入り込んだような感覚にもなれるんです。
「単眼鏡」を使うとみることができる世界。この「単眼鏡」美術愛好家の中には作品鑑賞には必須だという人もいます。実は私、今回単眼鏡に初挑戦しました!(ちなみに私は天体望遠鏡メーカーとしても有名な「ビクセン」のものを使っています)
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
この展覧会は、新型コロナウイルスの感染予防・拡大防止の観点から、会場内の混雑緩和のため、会期中の全日程において日時指定制を導入しています。詳細は公式サイトをご確認ください。
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」
会期:2020年11月3日(火・祝)-2021年1月31日(日)
会場:国立国際美術館(大阪中之島)
開館時間:9:00-17:30 ※金曜・土曜は20:00まで
(入場は閉館の30分前まで)
観覧料【日時指定入場券】
一般 1,700円
大学生 1,100円
高校生 700円
会場の最後には、ナショナル・ギャラリー設立以降、作品の収集に貢献したべネファクター(功労者)も紹介されてます。
彼らの思いも受け止めてほしいと思います。
作品を通して、巨匠との出会いを!心に豊かさと優しさを!
是非楽しんでください。
https://artexhibition.jp/london2020/
文/チアフルライター 甲斐千代子