沿線お役立ちコラム

尼崎城で地域対抗写真大喜利「ちいきいと」開催@みんなの尼崎大学

みんなの尼崎大学オープンキャンパスで神戸発地域対抗写真大喜利「ちいきいと」開催

神戸在住のチアフルライター、やまさんです。

 

「みんなが先生、みんなが生徒、どこでも教室」をスクールモットーに、尼崎市に住む人々が尼崎について楽しく学ぶため2017年に開学した「みんなの尼崎大学」。尼崎市役所を中心に、学びをテーマにまちの人がつながるような機会を作ろうというのがこのプロジェクトの趣旨だそうです。(その先駆けとなる「みんなのサマーセミナー」のレポートをチアフルライターのクニコ2000さんが書いています)

 

一昨年再建され、昨年の3月に一般公開となった尼崎城で、その活動のひとつである第25回オープンキャンパス「ちいきいと お城篇」が開催されました。

 

「ちいきいと」とは、わかりやすく言うと「地域対抗写真大喜利大会」。発祥の地は神戸市です。「ちいきいと」を立ち上げたコアメンバーである神戸市広報メディア企画担当課長、本田亙さんによると、神戸市にあるデザイン・クリエイティブセンターKIITOの企画で、「きいと(KIITO)」で「ちいき」をつなぐような企画ができたら、と「ちいきいと」と名付けられたそうです。

 

今回の「ちいきいと お城篇」は、尼崎市の尼崎南部再生研究室(あまけん)で「南部再生」という情報誌を発行している編集人の若狭健作さんが何度か「ちいきいと」に出演されたことをきっかけに、「みんなの尼崎大学」でもやってみては、という提案があり、実現したのだそうです。

3名の地元地区代表が8つのお題に写真で勝負

写真:陣羽織と忍者の衣装に身を包んだ司会の若狭さんと進行役の中嶋さん。尼崎城ではお姫様、忍者、兜&陣羽織、武士のコスプレ体験ができます。

写真:出演者の方々。左から大迫さん(立花)、東さん(武庫)、前口さん(園田)。奥にチラッと写っているのはBGM担当の多田さん。

 

「ちいきいと」では1回の勝負につき1つのお題が提示され、そのお題に沿って地元らしい写真1枚が各出演者により提示され、ご当地自慢合戦が繰り広げられます。今回は尼崎城にちなんで「お堀 canal」「鯱鉾(しゃちほこ) killer whale」「殿 king」「大名行列 parade」「忍びspy」「一揆 coup d’Etat」「大奥 labyrinth」「家紋 come on」の8つのお題が出されました。

 

尼崎市は武庫地区、立花地区、園田地区、大庄(おおしょう)地区、中央地区、小田地区の6つの地区に区分けされています。今回の出演者は園田地区代表の前口あかねさん、立花地区代表の大迫力さん、武庫地区代表の東和樹さん。この3名の地区代表が写真を使ったご当地自慢バトルを繰り広げます。会場は各地区の応援団、写真に出てきた人、さらには市長さんまでが観覧に来ており、かなりの盛り上がりようでした。

 

実は今回の「ちいきいと お城篇」で紹介された合計24枚の写真の中には、面白ネタやご当地ならではのあるあるネタに混じって、これはやまさんが是非紹介したいと思う素敵なストーリーがたくさん隠されていました。ですので、当日の会場の様子を実況しつつ、やまさんが独自に解説をつけてみました。皆さんもきっと尼崎ってこんな街だったのかとびっくりすると思いますよ。では早速会場の様子を見てみましょう。

放置自転車ワースト3から市内で収容能力1万4000台の駐輪場を整備へ JR立花駅

イラスト:尼崎中高年事業のロゴマーク

 

進行:2枚目のお題は、「鯱鉾(しゃちほこ) killer whale」です。

BGM ♪Killer Queen – Queen

(BGMとともに写真が紹介されます。プロジェクターには駐輪場をバックに尼崎中高年事業の帽子を被った男性の写真。)

 

立花:立花と言えば、駐輪場ですよ。皆さんがね、お世話になってる駐輪場で働いていらっしゃる山﨑さんなんですけれども、僕ずっと思ってるのはこの帽子がかっこええなって。かっこよくないすか、鯱鉾のようなこのマーク。

武庫:ちょっと無理矢理感が。

立花:このロゴの入ったポロシャツあったら欲しいな思ってるんですけど。これ、尼崎中高年事業株式会社のロゴマークなんです。

市長:(同社は2020年3月で事業から撤退するため)もうラストなんです。

立花:だからね、この帽子を被ってる方がいたらもうレジェンドなんです。マークの由来を色々調べたんですけどなかなかわからなくて。もうとにかく鯱鉾のような兜のようなね、かっこよさがあると思って。(やまさんが会社に問い合わせたところamagasakiの「a」をデザインしたものだそう)

市長:山﨑さんのおかげで駅前の放置自転車がすっかり無くなってもうて、ありがとう!山﨑さんにお礼の拍手!

 

尼崎市、特にJR立花駅前はその昔、全国でワースト3に入るほど放置自転車だらけだったそうです。2016年3月5日付けの産経ウエストによると、尼崎市では昭和61年から市内13駅周辺で放置自転車の統計調査を行ってきました。ピーク時の平成5年における放置自転車台数は1万6933台。しかし、駐輪場の整備、放置自転車の整理と指導といった地道な努力を続けた結果、平成30年度はなんと257台にまで減少。逆に国土交通省が行った平成30年の調査によると「駅周辺における駐輪場の総収容台数」は、尼崎市のJR尼崎駅南・北自転車駐輪場の収容能力台数が1万4,340台と全国ベスト3に。JR立花駅周辺にも現在8ヶ所の市立駐輪場、11ヶ所の民間駐輪場が完備されており、水も漏らさぬ万全の体制が敷かれています。

高度経済成長期、国や自治体からの要求に反旗を翻した人々がいた 田能遺跡

BGM ♪Refuse/Resist - Sepultura

 

進行:6個目のお題は、「一揆 coup d’Etat」です。

 

司会:「クーデター」って下に書いてますけど、これフランス語なんですね。じゃあ次の写真いきましょか。

(写真掲示)

会場:(拍手)

園田:ありがとうございます。園田が誇る田能(たの)遺跡です。

昭和40年、今から54年前にですね、尼崎市、伊丹市、西宮市の3市が共同でこのすぐ横の園田配水場という工業用水配水場の建設工事を始めたんです。その工事中に大量の土器がたまたま見つかりまして。で、現場で工事監督をしていた尼崎市の水道局職員さんが、大規模な遺跡が眠っていることに気づいたんです。ところがです。当時は高度経済成長期でして、尼崎・西宮・伊丹の工場へ一刻も早く工業用水を供給する必要がある。遺跡の調査なんかやってる暇はないと、市や国は圧力をかけてくるわけです。それはあかん、これは守らなあかんとその時園田住民が立ち上がったんです。この遺跡を、文化を園田で守ろうと、文化を大切にしようという思いがこの遺跡には込められていてですね。国との戦いですよね。地元の先生、生徒、近所の人達がボランティアで発掘作業に加わり、はたまた隣の豊中市からも援助があり、皆の力で守られたものが今ここにあるんです。(注:「国指定遺跡『田能遺跡』の発見から保存まで」に発掘の詳しい経緯が載ってます。ドラマになりそうなくらい面白い記事なのでぜひ読んでみてくださいね)

会場:(拍手)

園田:今慰霊祭を年に1回やってて、市長も来られてるみたいなんですけど、それは2000年以上前に亡くなったこの遺跡の人たちを、急に50年くらい前に鎮魂しようってことで。(「田能遺跡まつり」のこと。田能資料館が開館した昭和45年から続いているそう)

会場:(笑)

園田:この資料館の中に何故市民がこの遺跡を発掘したか書いてあって、「汚都市尼崎の未来を文化で溢れるものにしたい」と、尼崎の人が自分たちの町を「汚都市」って言ってて。

司会:当時の住民の人たちは相当辛かったんだと思いますよ。

園田:資料館の人がすごく言ってました。

会場:(拍手)

園田:ありがとうございます。

司会:田能遺跡は小学生たちが遠足で行ったりとかしてて。みんなの尼崎大学オープンキャンパスでも2年ほど前にこの田能遺跡を訪ねたんです。で、ここの田能資料館の竹原さんというスタッフの方が面白くて、中にミイラが飾られてるんですよ。それを案内するときに「じゃあ続いてご遺体のほうへ」

会場:(爆笑)

司会:間違いではないんですけど、なんか。

園田:園田って市民活動がめっちゃ多いんですよ。これもその一つで、園田はどこが相手であっても戦いに行きますから。

会場:(拍手)

司会:写真は意味がよくわからないですけども。

 

高度経済成長期とは、戦後まもなく始まった日本の世界でも類例を見ない急速な経済成長を遂げた期間のことを指します。この期間に石炭から石油への転換、合成繊維、プラスチック、家電の技術革新、石油化学コンビナートなどの大型化・集中化、モータリゼーション、スーパーマーケットなどの流通革命が飛躍的に進みました。反面、都市の人口過密、農村部の過疎化、大気汚染、水質汚染などによる公害病という弊害も生み出しました。

 

Web版図説尼崎の歴史によると、「東京・名古屋・大阪といった明治期以来工業化がすすんだ大都市圏においては、大気汚染・地盤沈下・水質汚濁といった公害が第二次大戦前にすでに始まっており、高度成長とともにさらに深刻化していきます。尼崎は、その大都市圏のなかでも、とりわけ多様で深刻な被害が集中した都市のひとつ」でした。尼崎市の特に南部には大手企業の工場が林立しており、臨海部に集中する火力発電所・重化学工業分野の工場群の煙突から排出される煤塵、それに国道43号に代表される幹線道路を走る自動車の大量の排気ガスが加わり深刻な大気汚染被害を尼崎にもたらしました。その結果1988年には市内の公害認定患者とその遺族らが電力、鉄鋼などの企業9社を相手取り、大気汚染物質排出の差し止めと総額約118億円の損害賠償を求めて神戸地裁に集団訴訟した「尼崎大気汚染公害訴訟」が起こりました。

 

「汚都市尼崎」とはその高度経済成長期に尼崎市にもたらされた負の遺産を指す言葉です。田能遺跡の発掘に関わった人々は、当時イケイケドンドンだったであろう行政からの圧力、世間の風潮に待ったをかけた勇気ある人々だったことがわかります。現在田能遺跡と尼崎市立田能資料館は園田の住民をはじめとした尼崎市民の手により大切な文化資産として園田配水場のそばに鎮座しています。

 

この他にも、武庫之荘に残る民話に、地元の田んぼを池にしようとした領主に嘆願し、その生命と引き換えに田んぼを守った五兵衛さんの話や、戦国時代、摂津平野一帯が日照りになったとき、三平という人物が領主の命令に背き猪名川の堤防を破って水を引き、その責任を取って自害したという三平伝説などの義民伝説が尼崎には少なからず残っているそうです。歴史をたどってみると、尼崎には反骨精神を持った人が多いのかもしれません。

ボランティアの手でゴミだらけの河川敷が美しい写真スポットに 武庫川コスモス園

BGM ♪Touch Me – The Doors

 

進行:じゃあ、最後の写真いってみましょうか。最後のお題は「家紋 come on」です。

司会:尼崎にお城ができて盛り上がってるところなんですけど、僕が今着てるのが九曜紋ていう尼崎城主の紋付き羽織です。

会場:へー

司会:皆さんどんな家紋を見つけてきたんでしょうか?

(写真掲示)

武庫:これは「家紋」というより「come on」のほうですね。「来てくれ」の。これは絶対紹介したかったんです。武庫川コスモス園の向こう側にドクターイエローといった奇跡の一枚になってるんですけども。元々この武庫川コスモス園ですね、この一帯は不法投棄がすごかったと聞いてます。で、「髭の渡し花咲き会」というボランティアグループが中心になって。

司会:きれいにしようと。

武庫:そう、きれいにしようということでコスモスを植えだした。で、こうやって今きれいなコスモス園に変わって、ゴミもほとんどないという状況になってます。で、写真のドクターイエローなんですけど、これはカメラマンの三好さんに撮っていただいたものです。

(拍手)

武庫:ドクターイエローは「幸せの黄色い電車」って呼ばれてまして、コスモスは10月中旬から11月中旬までしか咲かないですし、それとドクターイエローが写ってる奇跡の一枚になってて、最後はハートフルに締めたいなと。

司会:三好さんは会場に・・・

武庫:いらしてます。

司会:これは、どうやって撮ったんですか?

三好:ドクターイエローは時刻表に載ってないんです。しかも月に数回しか通らない。そやから、ある人から「今日何時に静岡を通過しましたよ」という情報をもらって、静岡から武庫川までの時間を時刻表で割り出して

会場:ほー(驚)。

三好:武庫川を何時に通過するというような(このあと長々と説明が続きます)

司会:なかなか鉄分(鉄道マニアらしい情報が)多めの

武庫:西村京太郎みたいな感じになってますね。

司会:すいません、あの、市長が「ドクターイエローとは何なのか」って。

三好:ああ、そこからね。

会場:(笑)

三好:ドクターイエローとはね、新幹線のお医者さんなんですよ。

市長:人は乗ってないんですね。

三好:人は乗れない。中にコンピューターが積まれてて、のぞみ仕様とこだま仕様というのがあるんです。のぞみ仕様であれば、のぞみが停車する駅に停まって、スピードものぞみと同じように走って、線路・架線・電圧を点検して、それで・・・

司会:ありがとうございます。ちいきいとに来るとドクターイエローについて学べますよ。

 

今では毎年秋になると、武庫川コスモス園には新幹線とコスモスのツーショット写真を撮るために多くの人が訪れるのだそう。武庫地区には「武庫川コスモス園」のほかにも1963年に日本で初めて作られた交通公園(子供が遊びながら交通ルールを学べるよう信号や歩道橋などの道路施設がある公園)である西武庫公園があり、公園内にある小川で「西武庫公園ホタルの会」というボランティア団体がホタルを復活させようと、毎年200匹のホタルの幼虫を放しているそうです。

 

2019年11月20日付けの朝日新聞デジタルによると、テレビ大阪による「関西住みたい街ランキング2019」で尼崎市が5位に、また住宅ローン専業大手ARUHIの「本当に住みやすい街大賞2018in関西」ではJR尼崎駅周辺が1位に選ばれたそうです。また、昨年の2〜3月に実施された市民意識調査によると、市民の多くが「駅周辺が整備され街の景観が良くなった」「放置自転車やひったくりの減少により治安が良くなった」と感じているそうです。地元住民ひとりひとりの街を変えようという強い思いと粘り強さが、いつの間にか尼崎を関西でいちばん住みやすい街へと押し上げていったんですね。

地元民しか知らない面白スポット情報がゲットできる「ちいきいと」

「ちいきいと お城篇」では上記で紹介したスポットの他にも、電流爆破デスマッチに出場した元女子プロレスラーが営む焼肉屋さん、いろんな盆踊り会場に出没するめちゃ踊りの上手いシュッとしたおじさんなど、地元に住んでいる人にしかわからないコアなスポットやネタが盛り沢山でした。

 

みんなの尼崎大学では次回のちいきいとも予定されているそうなので、ぜひ見に行ってみてくださいね。下記に「ちいきいと お城篇」で紹介されたスポットを紹介しています。こちらへもぜひ足を運んでみてください。

参考情報

HPみんなの尼崎大学

https://www.amanokuni.jp/ucma/

みんなの尼崎大学 フェイスブック

https://www.facebook.com/ucmamagasaki/

HPちいきいと

http://chiikiito.com/

立花代表 大迫力さん:HP 140B

https://140b.jp/

武庫之荘代表 東和樹さん:尼崎の今を発信する地域情報サイト 尼崎旅(あまたび)

https://ama-tabi.com/

園田代表 前口あかりさん:コミュニティスペースhinata フェイスブック

https://www.facebook.com/spacehinata/

NPO法人サニーサイド HP

http://sunnyside.peewee.jp/

音響担当 多田銀次郎さんのお店 ハワイアンカフェ「Pa’ina Wharfパイナワーフ」

https://painawharf.com/

お店の紹介記事https://ama-tabi.com/gourmet/paina-wharf.html

■尼崎城

開館時間:9:00〜17:00(最終入城は16:30)

休城日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日〜1月2日)

入場料:一般・学生 500円 / 小・中・高校生 250円

交通:阪神尼崎駅から徒歩5分

HP尼崎城:https://amagasaki-castle.jp/

あまがさき公式観光サイト ジョーのある町 尼崎

https://kansai-tourism-amagasaki.jp/

 

■園田競馬場

開門時間:昼レース開催時 10:00  ナイター開催時 14:00

アクセス:阪急園田駅より阪神バス20、21、22系統乗車、「競馬場」下車すぐ 阪神尼崎駅、JR尼崎駅、阪急園田駅より無料送迎バスあり

HP: http://www.sonoda-himeji.jp/

 

■西武庫公園(交通公園)

所在地:尼崎市武庫元町3丁目14−1

アクセス:阪神尼崎駅から阪神バス43-2番、JR立花駅から阪神バス47番・47-2番、阪急武庫之荘駅から阪神バス45番・46番それぞれ「武庫営業所行き」乗車、「西武庫公園」下車、徒歩3分。

HP: http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/map/1000380/1000422/1000859.html

 

■尼崎市立田能資料館(国指定史跡 田能資料館)

開館時間:10:00〜17:00

休館日:月曜日・年末年始(12/20〜1/3)

入館料:無料

HP: http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/104ama_tano/104annai.html

 

■水堂須佐男神社

所在地:尼崎市水堂町1−25−7

アクセス:JR立花駅から徒歩10分

HP https://www.m-susanoo.net/

参考記事:押し花の御朱印が素敵な水堂須佐男神社

https://tabicoffret.com/article/76533/index.html

 

 

■武庫川髭の渡しコスモス園

開園期間:10月中旬〜11月中旬

開演時間:入場自由(臨時駐車場は9:00〜16:00)

入園料:無料

アクセス:阪急武庫之荘駅またはJR立花駅から阪神バス 宮ノ北団地行き乗車、「西昆陽」下車徒歩5分

HP: http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/flower/082kosumosu.html

 

文/チアフルライター やまさん

→ やまさんの過去の記事はこちら

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