初日から盛況です
神戸在住のチアフルライター、やまさんです。
先日阪神電車に乗っていると印象的な写真と共に「世界報道写真展2019」と書かれた広告が。
というわけで早速8月6日に行ってまいりました。
初日、しかも平日の夜であるにも関わらず会場にはたくさんのお客さんの姿が。
撮影OKということで、展示写真を1枚ずつカメラに収めている方も多かったです。
会場であるハービスHALLが梅田にあることもありビジネスマン率高め、女性客も多かったです。
皆さん熱心に写真を見つめていました。
「世界報道写真展」って?
1955年、オランダのアムステルダムでカメラマンのグループを中心に世界報道写真財団が発足。
自分たちの仕事を世界の人々に見てもらおうと、財団により翌年からドキュメンタリー・報道写真の展覧会が開かれるようになりました。
毎年1月から2月にかけて前年に撮影され報道に使用された写真を対象に世界報道写真コンテストが開かれ、20名の国際審査員団によって選ばれた受賞作が世界中で展示されます。
「世界報道写真展」は年間世界の約100会場で開かれ、総計400万人が来場する世界最大規模の写真展なのです。
わずか10日間の会期中に来場者1万人
日本では毎年6月の東京を皮切りに例年巡回展が行われます。
ここ大阪のハービスHALLでは2001年から展示会を開始、今年で19回目になるそう。
非常に会期の短い展示会ですが、僅か10日間の間になんと!8千〜1万名もの来場者が訪れるそうです。
今回は女性フォトグラファーが躍進
今年で62回目を迎える世界報道写真コンテスト(ワールド・プレス・フォト・オブ・ザ・イヤー)、今回は129の国と地域の4,738名のカメラマンから78,801点もの写真の応募があり、「現代社会の問題」「環境」「一般ニュース」「長期取材」「自然」「ポートレート」「スポーツ」「スポットニュース」の8部門で25カ国43名が受賞しました。
今年の応募の特徴としては、女性写真家からの応募が多く、前年2018年の12%から32%へと飛躍的に伸びたそうです。
今回、残念ながら日本人の入賞者はありませんでしたが、毎年新聞社・通信社・雑誌社などに所属するカメラマンやフリーの写真家が精力的に応募しています。
過去1961年には日本人初のピューリッツアー賞受賞者でもある毎日新聞の長尾靖氏が、さらに1965年、66年には沢田教一氏がベトナムの戦場を切り取った「安全への逃避」「泥まみれの死」「敵を連れて」で大賞を受賞、2012年にはAFP通信の千葉康由氏、毎日新聞の手塚耕一郎氏、朝日新聞の恒成利幸氏が東日本大震災を捉えた写真でトリプル受賞、2016年には小原一真氏がチェルノブイリ近郊を撮影した写真が「人々」の部で一位入賞を果たしました。
(過去受賞作のアーカイブはこちら)
世界報道写真コンテストの特徴
ハービスHALLの会場責任者である稲田さんのお話しによると、世界報道写真コンテストの応募資格はプロの報道カメラマンであること。
そして写真にはフォトショップなど一切の加工処理を施さないことが条件。
ですが、受賞写真の中にはとても普通に写したとは思えないような幻想的なものもあり、カメラマンに高度な技術や感性が要求されていることが想像されます。
世界に数ある写真賞のなかでも世界報道写真コンテストは写真のアート性にも評価の主眼を置いているそうです。
審査員団は世界各国の写真家20名で構成されており、メンバーは毎年変わるそう。
今回の審査員には日本人のフォトキュレーターも名を連ねています。
もっとたくさんの学生に見てもらいたい
会場の一角でミニ企画をやっていました。
「日本の四季」をテーマにしたドローン撮影映像集です。
来場者の中にはカップルで来ている人たちも。
稲田さんによると、毎年幅広い年齢層の人が来場するそうで、リピーターも多いとか。
最近では高校生もちらほら見えるそうです。
来場者のアンケートには「こんな世界があったとは知らなかった」「日本は平和だと思った」「考えさせられた」「来てよかった、こんな写真と出会えてよかった」という回答がたくさん寄せられるそうです。
「こうしたお客様の声が聞けて主催者側としてもこの展示会をやる意義を感じています」と稲田さん。
「できればもっとたくさんの大学生や高校生の方に見に来ていただいて何か感じてもらったり考えてもらったりできればいいなと思っています」
写真+キャプションで見えてくるup-to-dateな世界の物語
John Moore, United States, Getty Images
ジョン・ムーア(アメリカ、ゲッティイメージズ)
世界報道写真大賞2019 「国境で泣き叫ぶ少女」
世界報道写真財団のHPには「私達の目的は世界と重大ニュースとのつなぎ役になることです(Our purpose is to connect the world to the stories that matter)」とあります。
報道写真展においては、写真が伝えたいニュースの背景を知ることは大変重要で、写真単体を見てもその背景を知らない人にとってはピンとこないもの。
文字情報にインパクトのある画像情報が加わってはじめて私達はそのニュースの真実性、切迫感、重要性に思い至るのです。
例えば、今回の大賞受賞作「国境で泣き叫ぶ少女」
この写真はメキシコとアメリカの国境で撮影されたものです。
写っているのはアメリカへの亡命を求めてホンジェラス共和国からはるばる1ヶ月に渡り中央アメリカとメキシコを旅してきたサンドラ・サンチェスタさんとその娘ヤネラちゃん。
中米に位置するホンジェラスは世界でも有数の美しいビーチやマヤ遺跡を持つ観光スポットですが、同時に「麻薬の経由地」と呼ばれており、ギャング間の抗争や麻薬取引のトラブルによる殺人事件が多発している非常に危険な地域でもあるのです。
そのためより安全な土地を求めて亡命する人々があとを絶ちません。
一方、アメリカのトランプ政権は昨年4月より「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策を開始、不法入国した移民は逮捕後に訴追収監され、親の収監が決定するとその子供は別の施設に保護され、親子は離れ離れになっていました。
こうした状況下において同年6月12日、テキサス州マッカレンでサンドラさん親子が国境監視員の取り調べを受けている様子がカメラマンのジョン・ムーア氏により撮影されます。
撮影の2日後にこの写真がメディアに掲載されるとSNSを通じてまたたく間に知られるようになり、全米各地での「家族を一つに」デモへと発展。
6月20日にトランプ政権はこの政策を撤回しました。
これについて世界報道写真財団のコンテストマネージャー、アナ・レイナ・ミール氏は世界報道写真展2019の日本公開に先立つプレスレビューの席で「報道写真が世界や政治に対して、いかに大きな影響力を持ち得るかを示す作品」と述べました。
この1枚の写真の中に現在世界中で問題となっている移民問題とその背景が内包されていることがわかります。
私達がその目をアメリカから日本に転じれば、日本にも同様の問題が起きていることに容易に気づくはずです。
今回展示されているその他の写真1点1点にも同様に社会・政治・民族・環境などの一筋縄では解決できないストーリーが隠されています。
「世界報道写真展2019」
この展示会の写真に触れた人は、必ずや1枚1枚の写真に秘められた世界の物語を紐解きたくなるに違いありません。
この夏、報道写真を水先案内人に、世界で何が起きているかのぞいてみませんか?
なお、「世界報道写真展2019」の隣の会場では、写真家・映画監督である蜷川実花さん監修による「未来を切り開くアスリート写真展」を同時開催(こちらは無料)。
二つの写真展を同時に楽しむことができます。
【世界報道写真展2019】
会期:2019年8月6日〜8月15日
会場:ハービスHALL(ハービスOSAKA B2F)
開館時間:11:00〜20:00(入館は閉館30分前まで)
観覧料:
当日券 一般700円/大学・高校・中学生500円/小学生以下無料
前売券 一般500円/大学・高校・中学生300円
梅田阪神プレイガイド、ローソン、ミニストップに設置のLoppi(Lコード:57711)、セブン−イレブン、チケットぴあ(Pコード:992-310)、ファミリーマート、ローソンチケット(http://l-tike.com)、チケットぴあ(http://pia.jp/)、e+(イープラス)等で販売
電話:06-6343-7800(平日9:00〜18:00)
世界報道写真展公式HP:
https://www.asahi.com/event/wpph/
World Press Photo HP:
https://www.worldpressphoto.org/
未来を切り開くアスリート写真展 〜蜷川実花監修「GO Journal」と東京2020パラリンピック「OEN-応援」〜HP:
https://www.parasapo.tokyo/schedule/19776
注:展示写真の中には刺激の強いものも含まれるため、小さいお子様の鑑賞には不向きです。
文/チアフルライター やまさん
→ やまさんの過去の記事はこちら
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