商店街全域で繰り広げられる音楽の祭典
神戸在住のチアフルライター、やまさんです。
5月11・12日、新開地・湊川で開催された神戸新開地音楽祭に行ってきましたよ。
今年で19回目を迎えるこの一大野外音楽祭、年々その規模を拡大しており、現在二日間で約8万人もの来客を動員するまでに。
今回は全国から約600組ものバンドの応募があり、選考を勝ち抜いた273組のバンドが9ヶ所の野外ステージ、4ヶ所のライブハウスステージ、1ヶ所のホールステージの合計14箇所で二日間に渡り様々なスタイルの演奏を繰り広げました。
「B面の神戸」が仕掛ける芸術復興運動
写真は神戸タワー跡地に建てられた記念碑カリヨン時計塔
神戸新開地音楽祭のキャッチコピーは「神戸のB面です」
そこに隠された意味を探るため、音楽祭の話に入る前に新開地の歴史と音楽祭の背景について少し触れておきたいと思います。
明治期に新湊川の付け替えにより旧湊川を埋め立て誕生した湊川・新開地。
戦前までこの街は「東の浅草、西の新開地」と呼ばれるほどの一大歓楽街であり、また神戸の中心市街地でもありました。
映画館・ダンスホール・スケート場を有しジャズ・ミュージシャン、ルイ・アームストロングが演奏したこともある新開地随一のランドマーク「ええとこ、ええとこ聚楽館」、演芸場の神戸松竹座、神戸タワー、湊川温泉などがひしめき合い、昭和11年(1936年)には世界的な喜劇俳優チャップリンがこの地を訪れました。
そんな新開地でしたが、戦争の空襲により大打撃を蒙り、さらにアメリカのGHQが新開地の南部をキャンプ・カーバーとして約10年間に渡り接収したため戦後復興が大幅に遅れることになりました。
その後1957年に神戸市役所が新開地から三宮へ移動することにより神戸の中心街が三宮へと遷移、新開地の先にある川崎重工業造船所の規模縮小、1971年の神戸市電廃止などが重なり、神戸松竹座、聚楽館が相次いで閉館。
新開地は衰退の一途を辿ります。
HP「新開地ファン」によると、戦前には隆盛を極めた新開地も一時は「暗くて気味が悪い」「物騒で歩けない」とまで言われるほどイメージが悪くなってしまったそうです。
そうした危機的状況に対し、昭和58年(1983年)に「新開地周辺地区まちづくり協議会」が発足、かつての新開地の賑わいを取り戻すべく地元商店街や自治会の代表者たちが立ち上がりました。
同協議会は後に「新開地まちづくりNPO」と名前を改めます。
その活動が本格化したのは阪神淡路大震災の直後。
震災の翌年1996年に「芸術家が住み、育つまち」「幅広い文化・芸術のあるまち」の実現を目指した文化芸術のインキュベーションセンターにして創造・発信拠点「神戸アートビレッジセンター(KAVC)」が誕生。
新開地の震災からの復興、そして芸術文化復興の嚆矢(こうし:ものごとのはじめの意)となります。
さらに2001年には聚楽館跡地に大京聚楽館ビルが新たに建設され、ビルには娯楽施設場のラウンドワンが入居、昨年2018年には落語・古典演芸の定席「喜楽館」がオープン、新開地は着実に元の姿を取り戻しつつあります。
同NPOでは「市民主体のまちなか再生を」「安全で持続可能なコミュニティづくりの核に」「地域に根ざした文化・芸術復興を」という目標を掲げ「神戸新開地音楽祭」をはじめ「新開地土曜マルシェ」「新開地映画祭」「新開地2丁目リノベーションプロジェクト」などの事業やイベントを展開しており、今後ますます新開地が活性化していくことが期待されます。
新開地まちづくりNPO事務局長の藤坂さんにお話を伺いました
音楽祭のパンフレット
各ステージの地図やプログラムが載っている必携アイテム
藤坂さん
音楽祭を始めるきっかけは、新開地がその昔芸能・映画・音楽などで栄えた町だったことが一番の理由です。
年々音楽祭への応募バンド・グループは増えていて、一度台湾からの応募もありました。
毎年初日のトリには有名アーティストに出ていただいています。
今まで山本リンダさん、「ゴダイゴ」のタケカワユキヒデさん、もんたよしのりさん、泉谷しげるさんなどに出演していただきました。
この音楽祭のために沢山のボランティアの方もまた参加しています。
ボランティアは一般公募で、1日に約70〜100名のスタッフが各会場を運営しています。
ボランティアの方には半年前に企画の段階から参加してもらっています。
ボランティアが企画にも関わるイベントは全国でも珍しいと思います。
実は私も10年前まではボランティアとして参加していたんですよ。
メイン会場の湊川公園には屋台もたくさん出店していますが、地元からが半数、残りの半数は全国各地からです。
新開地商店街からはかまぼこ・天ぷらの老舗三笠屋さん、居酒屋の八喜為さんが出店しています。
メイン会場ではアート縁日、リサイクルフリーマーケット、ガーデンショップ、こども広場もあり、子供から大人まで幅広い方が楽しめるようになっています。
会場には音楽祭発足当初からオムツ替えスペースや授乳室のブースがあり、赤ちゃん連れのお母さんでも困ることがないよう配慮しています。
また、5、6年前からは東北や熊本の震災支援ブースが毎年出店しています。
パンフレットのイラストは高畠邦生さんという東京の絵本作家の方に毎回お願いしています。
うちで作っているパンフレットのイラストは全て高畠さんにお願いしていて、全体の統一感を出すようにしています。
昨年の7月には上方落語の定席として文化・伝統芸能の拠点「喜楽館」がオープンしました。
今、兵庫区総合庁舎・区民ホールの建て替え工事中ですが、完成後は新たに完成した区民ホールにライブ会場を広げ、さらに多くのバンドに参加してもらいたいと思っています。
早速会場を回ってみましょう
実はやまさんは普段ほとんど音楽を聞かないのです。
でも商店街巡りは大好き。
商店街が主催する音楽祭とはどのようなものなのでしょう?
興味津々。
名物!新開地のど自慢。
バックバンドの「小田イタルとワイルドハンズ」演奏による「太陽にほえろ!」OPテーマ曲がカッコよかった!
やまさんは刑事山さんのファンだったのです。
極上のお天気。
気温もぐんぐん上昇中です。
そのせいか、どの出場者も合格、鐘が鳴りまくりでした。
メインステージのMCはターザン山下さんと小野ともこさん。
Kiss FM KOBEのパーソナリティやナレーター業を務めるターザン山下さんは地元では大変な有名人です。
メイン会場にある屋台村。
新開地の老舗三笠屋さんのてんぷらは1個150円。
看板も手作りだそう。
BIGMANステージ、兵庫中学校吹奏楽部の演奏。
ステージごとに出場バンドの種類があり、こちらでは大人数によるブラスバンドやビッグバンドの演奏を見ることができます。
1丁目ステージ「東京昭和ベイビーズ」。
静岡から参戦。
お姉さんの頭に富士山乗ってます。
元気になるバンドが集まったスクエアステージ。
モッズファッションに身を包んだ「THE CHOICE」。
観客の皆さん、はノリノリで踊ってました。
最後はやんややんやの大喝采と「アンコール!」の大合唱。
中編に続く