12人に1人がかかるといわれる乳がんに関心が高まっている現状ですが、
女性のみなさん、最近、歩くだけでもすごく乳房が痛くて、病院に行って検査したら「乳腺症です」といわれたことはありませんか?
精密検査もほとんどないし、治療してくれるわけでもないし、「様子を見てください」といわれるけれど、本当にこのまま放っておいていいのかしら?と思われている方は実は多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、そんなみなさんが疑問に思われている「乳腺症」についてわかりやすく解説します。
乳腺症ってなんですか?
まず、がんではありません。良性です。主な症状は、乳房痛、しこり、張り、硬さで、両方もしくは片方のみに見られます。透明や乳汁様の乳頭分泌液を伴う方もいます。
原因は、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)のアンバランスで、特にエストロゲンが過剰に出ることで、乳管(乳汁の通り道)とそれを支える組織が刺激されて乳腺全体が腫れます。そのため痛みや乳房が硬く張ったような症状が出てくるのです。
症状の大部分は月経前に最も強く、月経後に改善しますが、ひどい場合は月経周期に関係なく持続することもあります。
乳腺症の痛みをなくすにはどうしたらいいの?
多くは月経周期に一致するので、経過観察のみで自然に軽快していくことがほとんどです。しかし、痛みが強く日常生活に支障がでる場合は、消炎鎮痛薬の処方や内分泌療法を行うこともあります。食生活においては、乳房痛の原因と考えられているカフェイン、脂肪食、ニコチンの摂取を減らすことで痛みを和らげることができるかもしれません。
また、ストレスや睡眠不足も痛みの原因になるといわれていますので、規則正しい生活習慣が大切です。
サイズの合わない下着も痛みを増強させることがありますので、適切な下着の着用も有効です。
乳腺症は乳がんにはならないの?
乳腺症といわれたから、将来絶対に乳がんになるわけではありません。乳がんとはほぼ無関係です。しかし、乳腺症は乳房が硬く張っているため、マンモグラフィでは乳房全体が白く写るので、仮にがんがあっても小さな病変はわかりにくくなります。
そこで、超音波検査を併用することで病変を見逃さないようにしています。
つまり、乳腺症があるとマンモグラフィ検診だけでは病変を見つけにくいことが多いので、超音波検査による定期的な観察が必要であるということなのです。
乳腺症を指摘された方は超音波検査も行うほうがよいでしょう。
さいごに
乳腺症であれば痛みがあっても心配ありません。症状が強くても、いずれよくなります。ただし自己判断は禁物です。異常を感じたら専門の医療機関を受診してください。
今村 美智子
兵庫医科大学病院 乳腺・内分泌外科 講師