便秘は患者さんの生活の質や日常生活の活動性を大きく損なう疾患であり、しっかり治療すべき疾患といえます。国民生活基礎調査では若い女性や高齢者に便秘が多いことが分かっています。
今回のコラムでは、「便秘」についてわかりやすく解説したいと思います。
日本人の多くは、便秘を病気と認識していない
便秘とは本来、体の外に出すべき便を十分量かつ快適に排出できない状態と定義されています。便秘で悩んでおられる方は多いと思いますが、我々の最近の調査では意外と便秘を病気と認識していない人が多いことが明らかとなっています。
最近はインターネットや薬局で簡単に下剤の入手が可能になったため、病院へ便秘を主訴に受診される患者さんは少ないと言われています。また大腸を刺激性する下剤が乱用され、便秘を主訴に病院を受診される患者さんが、すでに耐性ができて、お薬が効きにくくなっていることも少なくありません。
なぜ、女性に便秘が多いかに関しては、筋力や食事量摂取量の低下、黄体ホルモンなどが関係しているのではないかと考えられています。
便秘は重要な病気のサイン?
便秘は様々な原因でおこってきます。便秘でお悩みの方は、便秘の原因となっている重要な病気が隠れていないかなどを調べる必要があります。一般的には大腸癌や神経疾患、内分泌疾患・代謝異常、消化管疾患、食事の影響などが便秘の原因と考えられていますが、普段服用している医療用医薬品、例えば抗うつ薬や抗てんかん薬、降圧剤であるカルシウムブロッカーなども便秘の原因となることが知られています。
少なくとも便秘に苦しむ患者さんは放置したり、市販の下剤を乱用するのではなく、医療機関を受診することが大切です。
便秘の治療は?
便秘の治療目標は便の形を正常化し、排便を促進させ、患者さんがつらいと感じる症状を改善することです。基本的な治療は、①食事指導や生活指導、②お薬による治療(薬物療法)が中心となります。
まず第一に食事摂取、十分な睡眠、適度な運動など規則正しい生活習慣を身につけるための指導はもちろんのこと、毎日の排便や適切な排便姿勢(前傾姿勢)をとるなど正しい排便習慣をつけることも重要です。
一般的に病院で処方されるお薬には浸透圧性下剤や上皮機能変容薬、膨張性下剤、大腸刺激性下剤、漢方薬、消化管運動改善薬、浣腸薬、座薬などが挙げられますが、基本的には作用の緩徐な薬剤から用いて、治療効果を見ながら症状改善がない場合は徐々に薬剤を増量し、それでも効果不十分な場合は、作用機序の異なる薬剤を使用していくのが大原則です。
この記事を書いた人
富田寿彦
兵庫医科大学病院 消化管内科 講師