沿線お役立ちコラム

流産を繰り返す不育症とは

兵庫医科大学病院 産科婦人科の福井淳史です。妊娠はするけれども、流産や新生児死亡などを繰り返してお子さんを持てない場合を不育症といいます。
今回のコラムでは、そんな女性の病気「不育症」についてわかりやすく解説します。

不育症の原因

妊娠はするのだけれど、その妊娠を維持することが出来ず、赤ちゃんが産まれる前に流産や死産となってしまったり、産まれてすぐに亡くなってしまったりすることを繰り返す場合を不育症といいます。

流産の原因は、胎児染色体異常に起因することが多いのですが、不育症の場合には母体の子宮形態の異常、甲状腺や卵巣からのホルモン分泌異常、糖尿病などの代謝異常なども原因となります。
また、赤ちゃんがお母さんのお腹にいるときは、お母さんの血液から酸素や栄養をもらっていますが、母体と胎児間の血流が悪くなる(血の固まりが形成される)ことや、胎児が母体から免疫学的に拒絶されたりすることにより流産となる場合もあります。

現時点では不育症の原因の60%が不明とされており、日々その原因を解明すべく世界中で研究が行われています。

不育症の治療法は?

1回の妊娠での流産率は15〜20%であるとされており、約40%の女性が生涯のうちに流産を経験するとされています。
先に述べたように不育症の原因は多岐にわたりますが、適切な検査と治療により85%もの不育症患者さんが出産に至ることができます。

内分泌異常や代謝異常が認められる場合には、原疾患の治療が基本となります。
また血の固まり(血栓)を作りやすい状態の場合にはアスピリンという内服薬やヘパリンという注射薬を用いて血を固まりづらくします。
母体が免疫学的に胎児を攻撃しやすい状態になっている場合には、それをおさえる治療が有効であることもあります。さらにはカウンセリング治療が有効であることも知られています。

不育症の検査・治療の病院で迷ったら

何度も流産を繰り返し、次の妊娠が怖い。妊娠しても怖くて仕方がない。
一様に不育症の患者さん達は、そのような事をおっしゃいます。
なんとか不育症で苦しむ患者さんにお一人でも多く元気な赤ちゃんを抱いて頂きたい、そんな思いで私どもは研究を行っております。
一般的な不育症の検査・治療はもちろんの事、主として免疫学的な原因をお持ちの方に対する原因解明と様々な治療法を世界に先駆けて行っております。

不育症の治療は、適切に診断し、それに対する治療を行わなければ決して良い成績が得られないことが知られています。不育症かな?と思ったら、是非一度受診を考えてみて下さい。一緒に頑張っていきましょう!

この記事を書いた人
福井淳史

兵庫医科大学病院 産科婦人科