兵庫医科大学 乳腺・内分泌外科教授の三好 康雄です。女性がかかるがんの中でも一番多いと言われる「乳がん」ですが、病気の内容や発見方法などについて、意外とご存じない方も多いのではないでしょうか? 今回のコラムでは、そんな乳がんについてわかりやすく解説します。
「乳がん」って、どんな病気?
ライフスタイルや食事の変化、出産の高齢化など、さまざまな要因によって「乳がん」の患者数は増えており、実に現在、“日本人女性のおよそ12人に1人”が乳がんだと言われています。ほかのがんと比べると「若い世代でもなる人が多い」というのが特徴で、30代から増え始め、40~50代で最も患者数が多くなります。
「がんは遺伝する」とよく言われますが、遺伝性の乳がんは全体の1~2割に過ぎず、多くは遺伝とは関係ない要因によるものですので、親族に乳がん患者がいないからと言って油断は禁物です。
どうすれば早期に発見できるの?
女性がかかるがんの中で最も多いのが乳がんですが、死亡率はトップではなく5番目。早期に発見できれば比較的治りやすいがんであり、一度治療すれば9割は再発しないとも言われています。
自分で早期発見する方法として、まずは「しこりやひきつれ、変形などによる左右の形の差がないか」「乳頭からの分泌物がないか」などを確認するセルフチェックがおすすめです。ただし、乳がんの中には、早期にはしこりにならずに自分で気づきにくいものもありますので、やはり定期的に検診を受けることが大切でしょう。日本の乳がん検診率は3~4割と先進国では最低レベルですが、発見が遅くなると治療が難しくなりますので、できるだけ早めの受診をおすすめします。
乳がんの検診には「マンモグラフィ」と「エコー」の2種類があります。40代以上がマンモグラフィ検診の対象です。最近40代ではマンモグラフィとエコーの併用で発見率が上がるというデータも発表されました。40歳未満でも身内に乳がん経験者がいる方は、念のためエコー検診を受診されるといいかもしれません。
もしも乳がんが見つかったら治療方法は?
検診でもしも乳がんが見つかった場合、基本的に治療方法は手術となります。乳がんには抗がん剤やホルモン剤がよく効くため、手術前にこれらの薬でがんを小さくするという方法もあります。また、目安として、がんが3㎝以下であれば乳房を温存する手術が可能です。万が一温存できない場合でも、希望される方には、形成外科と連携して乳房再建術を行うこともできますのでご安心ください。
最近では分子標的薬など新しい薬の開発も進んでいて、兵庫医科大学病院ではそういった薬の治験も行っています。また、遺伝が原因の乳がん・卵巣がんを心配される方には、当院で遺伝子検査を受けていただくこともできますし、遺伝子の変異が見つかった場合には、乳腺・内分泌外科と産科婦人科が連携して患者さんのご希望に沿った処置を行うようにしています。乳がん治療に関して不安を抱えていらっしゃる方は、いつでもご相談ください。